上岡敏之

上岡敏之：指揮とピアノを股にかける国際的音楽家

上岡敏之（かみおか としゆき）は、1960年9月20日に東京都で生まれた、日本の傑出した指揮者でありピアニストです。そのキャリアの大半をドイツを中心としたヨーロッパで築き、数々の要職を歴任しながら、日本国内でも活発な演奏活動を展開しています。

日本での礎とドイツへの飛躍

神奈川県立湘南高等学校を卒業後、1979年に東京藝術大学に進学しました。同大学ではマルティン・メルツァー教授に師事し、指揮、作曲、ピアノ、ヴァイオリンといった多岐にわたる音楽分野を修めました。在学中の1982年には権威ある安宅賞を受賞し、その才能を早くから認められます。1984年にはロータリー奨学生としてドイツへ渡り、ハンブルク音楽大学でクラウスペーター・ザイベルに指揮を学びました。さらに1986年にはマセフィールドの奨学金を得て研鑽を積むなど、若くして国際的な環境で学びの機会を得ています。

ドイツでの輝かしいキャリア

ドイツでの研鑽を積んだ上岡氏は、1987年にハンブルク音楽演劇大学で室内楽および伴奏の講師に就任すると同時に、シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン州の州都キールにあるキール劇場とソロ・レペティートゥア兼専属指揮者として契約を結び、プロとしてのキャリアを本格的にスタートさせました。キールでの活動を1992年まで続けた後、拠点をノルトライン＝ヴェストファーレン州のエッセンに移し、市立アールト劇場の第一専属指揮者として活躍しました。エッセン滞在中には、州立フォルクヴァンク音楽大学で吹奏楽および指揮法の講師も務め、教育者としての手腕も発揮しました。

その後、1996年から2004年8月にかけては、ヘッセン州立歌劇場（ヴィースバーデン）の音楽監督を務め、劇場の音楽的統括を担いました。また、1997年から2006年まで、ノルトライン＝ヴェストファーレン州ヘルフォルトの北西ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を兼任するなど、多忙な活動を展開します。2004年からはノルトライン＝ヴェストファーレン州ヴッパータール市の音楽総監督およびヴッパータール交響楽団の首席指揮者に就任（2010年までその職を務める一方、2009/10年シーズンからはザールラント州立劇場（ザールブリュッケン）の音楽総監督にも就任し、精力的に活動の場を広げました。

指揮台と教育現場で

ポストに就いていた劇場やオーケストラ以外にも、上岡氏はドイツ国内の20以上のオーケストラに客演し、いずれも成功を収めています。その解釈と統率力は高く評価されています。教育者としては、2000年から2001年にかけてフランクフルト音楽大学で音楽アンサンブルの代理教授を務めたほか、2004年10月以降はザールブリュッケン音楽大学の正教授として、後進の指導に情熱を注いでいます。また、ドイツ音楽協議会とともにヴィースバーデンで指揮者フォーラムを二度開催し、同協議会の審査員も務めるなど、ドイツの音楽界への貢献も大きいものがあります。

日本での活動と近年

上岡氏はドイツを拠点としながらも、日本国内のオーケストラへも定期的に客演しており、日本の聴衆にもその音楽を届けています。また、指揮活動と並行してソロ・ピアニストとしても活動しており、その多才さを示しています。

近年の活動としては、2015年4月から2016年8月まで新日本フィルハーモニー交響楽団のアーティスティック・アドヴァイザーを務め、2016年9月からは同団の音楽監督に就任し、2021年8月まで5年間の任期を満了しました。さらに、2016/17シーズンからはコペンハーゲン・フィルの首席指揮者に就任するなど、その活動の場はヨーロッパ全域に及んでいます。

主な受賞歴と特筆すべき公演

2003年にホテルオークラ賞を受賞。
2007年には第15回渡邊暁雄音楽基金音楽賞を受賞。
日本国内では、読売日本交響楽団やNHK交響楽団「第九」、新国立劇場「椿姫」、日生劇場「魔笛」など、主要な公演で指揮台に立っています。
手兵であるヴッパータール交響楽団を率いて日本公演やミラノ、オランダ公演を行うなど、自らが育てたオーケストラと共に国際的な活動も展開しています。

上岡敏之は、指揮者としてもピアニストとしても高い評価を得ており、ドイツと日本を往復しながら国際的なキャリアを歩み続ける、日本の音楽界にとって重要な存在です。

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