上杉賢士

上杉 賢士（うえすぎ けんし）

上杉賢士は、1948年に生まれ、2020年に没した日本の教育者です。彼は、プロジェクト・ベース学習（PBL）を専門とし、その理論と実践の普及に尽力しました。日本PBL研究所の理事長を務めたほか、学校法人いいづな学園学校長や日本生徒指導学会副会長などの要職を歴任し、日本の教育界に多大な貢献をしました。

人物と経歴

上杉賢士は1948年、山梨県に生まれました。教育を志し、1972年に千葉大学教育学部を卒業しました。卒業後は小学校教員として教壇に立ち、千葉県内の船橋市や千葉市の小学校、さらに母校である千葉大学の教育学部附属小学校で合計16年間にわたり、子どもたちの指導にあたりました。この期間に培われた現場での経験は、その後の教育研究や政策提言の基礎となりました。

小学校教員としてのキャリアの後、上杉は教育行政の分野へと移ります。千葉市教育センター、千葉県総合教育センター、千葉市教育委員会指導課といった機関で、およそ11年半にわたり教育行政の職務に携わりました。ここでは、教育政策の立案や教員研修の企画・実施など、より広範な視点から教育システムに関与しました。現場の実践経験と行政での政策経験を兼ね備えたことは、彼の教育観を形成する上で重要な要素となりました。

1999年からは大学教育の世界へと活動の場を移しました。千葉大学大学院教育学研究科の教授に就任し、後進の育成や教育学の研究に従事しました。その後、2011年には同学部附属教育実践総合センター教授となり、教育実践に関する研究およびその成果の普及に注力しました。大学教授としての期間を通じて、彼は自身の専門であるプロジェクト・ベース学習の研究を深め、その理論体系化と実践方法の開発に取り組みました。

彼の専門分野であるプロジェクト・ベース学習は、子どもたちが現実的な課題や問題に取り組み、探究活動を通じて知識やスキルを習得する学習方法です。上杉賢士は、このPBLが、これからの社会で求められる主体的で探究的な学びを実現するための有効な手段であると強く提唱しました。彼はPBLの実践事例研究を進め、その効果や課題を明らかにし、全国の教員に向けた研修や講演活動を積極的に行いました。

著作

上杉賢士は、その豊富な教育経験と研究成果をもとに、教育に関する複数の著作を刊行しています。主な著書としては以下のものがあります。

『若い教師が元気の出る7つの提言―教育者としてのキャリアのつみ方』（2010年3月、明治図書出版）
『プロジェクト・ベース学習の実践ガイド―「総合的な学習」を支援する教師のスキル』（2010年10月、ほるぷ出版）
* 『「ルールの教育」を問い直す 子どもの規範意識をどう育てるか』（2011年10月、金子書房）

これらの著作は、特に教育現場の教員にとって実践的な示唆に富む内容であり、広く読まれました。プロジェクト・ベース学習に関する書籍は、総合的な学習の時間が導入されるなど、探究学習への関心が高まる中で、多くの教育関係者に影響を与えました。

上杉賢士は、小学校教員、教育行政官、大学教授という多様な立場から日本の教育に貢献しました。特にプロジェクト・ベース学習の理論と実践の普及における彼の役割は大きく、その教育観は今なお多くの人々に影響を与えています。2020年にその生涯を閉じましたが、彼の残した業績は、これからの教育を考える上で重要な示唆を与え続けています。

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