上杉遺民一揆

上杉遺民一揆（うえすぎいみんいっき）

上杉遺民一揆は、慶長5年（1600年）に関ヶ原の戦いと連動して越後国で勃発した武力衝突です。この戦いは、徳川家康率いる東軍についた堀氏と、西軍に与した上杉景勝の軍勢、そしてその影響下にあった越後の在地勢力との間で繰り広げられました。「上杉棄民一揆」とも呼ばれます。

一揆勃発の背景

豊臣秀吉の死後、政情が不安定になる中、五大老の一人であった上杉景勝は慶長4年（1599年）に伏見から領国の会津へ帰国しました。景勝は家老の直江兼続に命じて神指城の築城を開始し、街道や峠の要塞化を進めました。また、浪人を多数雇用し、軍備を増強しました。

一方、上杉氏の旧領であった越後を領有していた堀秀治は、これらの上杉氏の動向を徳川家康に報告しました。慶長5年3月には、家康と景勝の関係修復に尽力していた藤田信吉が上杉家から出奔するという事件も起きました。

家康は伊奈昭綱と増田長盛の家臣である河村長門を使者として会津に派遣し、景勝に上洛または弁明のための使者を送るよう求めました。これに対し上杉方は、西笑承兌宛に直江兼続の名で有名な「直江状」を送りました。この書状は挑発的な内容を含み、家康を激怒させました。ただし、現存する直江状は後世に改竄された可能性も指摘されています。

直江状を受け取った家康は上杉攻めを決意し、諸大名に上杉討伐の軍を組織するよう命じました。堀秀治には津川口から会津へ攻め込むよう指示しました。堀家内部では上杉氏との連携を主張する意見もありましたが、最終的には家康方につくことを決定し、戦争の準備を始めました。

一揆の展開

上杉遺民一揆は、徳川方の北陸方面からの侵攻を阻止するとともに、上杉氏が奥羽越佐を一大領国とすることを目指したとする説があります。上杉方は旧領である越後国内で軍事行動を展開し、堀氏の勢力に対抗しました。

当時、越後には会津転封に従わずに残留した上杉家臣や、上杉氏と友好的な関係を築いてきた在地武士が多く残っていました。堀氏は転封後すぐに検地を行い、年貢を増徴したため、農民たちの不満が高まっていました。上杉氏はこれらの不満分子や一向宗徒などを糾合し、一揆勢力を組織しました。さらに、会津からも軍勢を送り込みました。

一揆勢は8月1日に小倉政熙が守る下倉城を包囲し、陥落させました。しかし、翌日には坂戸城の堀直寄によって奪還されました。その後も、一揆勢は魚沼地方や小千谷、柿崎などで戦闘を繰り返しました。彼らは会津と越後の国境にある加茂山などに砦を築き、抵抗を続けました。

しかし、一揆勢は統一された目標や指導者に欠けていたため、その活動は散発的なものにとどまりました。そのため、個別に追討されていきました。小千谷の薭生城では、僧侶に率いられた3800人が立て籠もりましたが、これも鎮圧されました。

9月8日、堀親良は下田で300人以上の首を討ち取りました。同日、堀直寄は父の堀直政、兄の堀直清とともに三条城から津川に向けて出兵しました。津川へ向かう途中、会津の兵3000人余りと一揆勢が深田を前に高所に陣を構えて待ち構えていました。直寄は奇策を用いて敵を打ち破りました。

一揆の終結と影響

石田三成が挙兵したため、家康は8月5日に江戸へ戻り、諸将に西上を命じました。越後口からの上杉追討軍の侵攻は中止となり、越後の諸大名は国内の一揆勢の鎮圧に専念することとなりました。

徳川方の西上により、上杉方は攻撃目標を北方の最上氏に変更したため、越後方面に割く軍勢はなくなりました。越後では堀家を中心とした残党狩りが行われ、一揆は自然消滅していきました。

この一揆は、直江兼続が独断的に動かし、石田三成や佐竹氏らとも連携していたとする説もあります。この一揆によって、越後国内の国人など在地勢力の影響力が低下し、その後の統治者にとっては統治が容易になりました。

関連項目

* 五智院 - 小千谷市の寺院。一揆勢として活動。

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