西笑承兌

西笑承兌（さいしょう じょうたい）

西笑承兌は、16世紀後半から17世紀初頭にかけて活躍した臨済宗の僧侶です。相国寺の住持として、寺の復興に尽力しただけでなく、豊臣秀吉や徳川家康の側近として、政治や外交の舞台でも重要な役割を果たしました。

生涯

1548年、山城国伏見（現在の京都市伏見区）に生まれた西笑承兌は、幼くして出家し、夢窓派の中華承舜に師事しました。その後、一山派の仁如集堯にも学び、詩文の知識を深めました。

1584年には、相国寺の92世住持に就任しました。相国寺は、五山第二位という格式を誇る名刹であり、塔頭の鹿苑院は、日本の禅寺・禅僧を統括する僧録の地位を占める重要な寺院でした。しかし、戦火や織田信長による敷地の没収により、相国寺は苦境に立たされていました。

1585年、鹿苑院の地が相国寺に返還されると、承兌は院主として第50代鹿苑僧録に就任しました。さらに、第52代鹿苑僧録も務めています。

学識に優れていた承兌は、豊臣秀吉の側近として活躍し、ポルトガルやスペインの総督への外交文書の執筆を担当しました。文禄・慶長の役では、秀吉の側近くに仕え、講和交渉にも関与しました。

秀吉の死後も、承兌は徳川家康に仕え、上杉景勝の家老である直江兼続との交渉に当たりました。この時、兼続から送られた返書が、後世に「直江状」として知られることになります。関ヶ原の戦い後には、家康から寺社訴訟の取り扱いを命じられ、三要元佶とともにこの任にあたりました。当時の興福寺の僧からは、「日本寺奉行」と称されるほど、寺社行政において重要な役割を果たしました。また、南禅寺の以心崇伝を家康に推薦し、重用されるきっかけを作りました。

承兌の権勢により、相国寺の復興は大きく進みました。1598年には、承兌を開山とする塔頭の豊光寺が創建され、豊臣秀頼から1万5千石の米が寄進されました。1605年には、法堂の落慶供養が行われ、徳川家康からも2万石の米が寄進され、三門が造営されました。これらの功績により、承兌は相国寺中興の祖として讃えられています。しかし、一方で、鹿苑寺など数寺を横領したという悪評も残されています。

1608年、西笑承兌は61歳で亡くなりました。伏見城下の指月に屋敷を構えたことから、その地は「泰長老」と呼ばれるようになりました。

文化における事績

承兌は、著書『異国来翰認』を著したほか、秀吉が造った伏見の茶屋には「学問所の記」という文を残しています。

また、徳川家康の文化事業である出版事業（伏見版）にも関与し、『貞観政要』、『周易』、『吾妻鏡』を刊行しました。特に、『周易』（1605年）の出版に携わったことで、近世易学隆盛の祖ともされています。

登場作品

西笑承兌は、以下の映像作品に登場しています。

軍師官兵衛（2014年、NHK大河ドラマ、演：江藤漢斉）
どうする家康（2023年、NHK大河ドラマ、演：でんでん）

参考文献

『鹿苑日録』大洋社、続群書類従完成会、全7冊
『西笑和尚文案』思文閣出版,2007.
『相國寺史料』第一巻、（相国考記、相国寺史稿、永徳二年～慶長十四年、慶長十年～元和六年）、思文閣出版。
藤井讓治編『織豊期主要人物居所集成』思文閣出版,2011.（杣田善彦「西笑承兌の居所と行動」）
伊藤真昭「慶長期における徳川家康と畿内寺社 : 『西笑和尚文案』の分析を通して」『待兼山論叢. 史学篇』第28巻、大阪大学大学院文学研究科、1994年、ISSN 03874818、NAID 120005463037。
相国寺. “相国寺物語” (pdf). 相国寺.

関連項目

相国寺
日明貿易

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