上東遺跡

上東遺跡の概要

上東遺跡（じょうとういせき）は、岡山県倉敷市の上東に位置する大変重要な考古学的遺跡です。この遺跡は弥生時代後期から古墳時代前期にかけての集落跡を中心に、古代から中世にわたる遺構を含む複合的な遺跡です。特に、当時の吉備国における中核地域であったと考えられています。

自然環境と遺構

遺跡は、足守川の西岸に形成された自然堤防の上に位置しています。ここでは、弥生・古墳時代に栄えた集落の跡が確認されており、竪穴建物や製塩炉、さらには波止場状の遺構が発見されています。出土品としては、合計9,608個の桃核や、数多くの土器、土壙、木製品が含まれており、これらは波止場状遺構に設けられた船溜まりの突堤の南側から見つかりました。

波止場状遺構は地中70センチメートルの深さに位置し、幅が14.5メートルから4メートル、長さが少なくとも45メートル、高さが約2メートルという大規模なものです。その構造は粘土や砂を使用し、杭で支える形となっており、当時の先端技術を駆使して作られていました。

上東式土器と文化

出土した土器の中で特に注目されるのは、「上東式（じょうとうしき）」と呼ばれる片口の壺です。これには、太い条線文が施されており、その特徴からこのように名前が付けられました。これらの土器は、航海安全を祈る儀式に使われたと考えられ、特に絵画文土器の出土が示す通り、当時の人々の信仰の範囲を伺い知ることができます。

この波止場状遺構は古代吉備国の重要な港湾施設の一部と見なされており、その発見は歴史的な意義を持ちます。実際、波止場状遺構の発見は、国内で二例目の例となり、過去の交易の様式や地域の発展に関する重要な手がかりとなっています。

発掘調査の経緯

上東遺跡では、昭和20年代に田畑の地下げ工事が行われた際に、多数の土器が出土されました。これを機に出土物の特性が認識され、「上東式」として名付けられるようになりました。その後、岡山駅と博多駅間を結ぶ山陽新幹線の開業決定に伴い、昭和40年代後半には大がかりな発掘調査が開始されました。

発掘作業は、山陽新幹線という重要インフラの建設と時間の制約に直面しながらも、粘り強く続けられました。調査により、一部の古代住居跡および多くの土器が明らかになりましたが、建設工程の厳しさから長期的な調査は難しく、その結果、遺跡の保護と発掘の両立が求められる状況にありました。

現在の評価と文化的意義

近年、平成に入り、道路の整備に伴って再調査が行われ、過去には発見されなかった新たな遺構も発見されました。この調査で出土したのは、弥生時代の土器棺墓群や古墳時代の水田遺構、さらには珍しい鹿角製の管玉や漆入りの土器、そして土器棺の中から出土した人間の歯です。

出土した桃核は、当時の水辺の祭祀に使用されていたと考えられ、中国からの文化的影響が見て取れます。特に上東から出土した桃核の数は、全国的に見ても群を抜いて多く、岡山と桃との深い結びつきを物語っています。この伝統は後に桃太郎の伝説にも影響を与えたと考えられています。

アクセス情報

上東遺跡へのアクセスは、JR山陽本線の中庄駅や庭瀬駅から車で約15分、また山陽自動車道の倉敷IC、岡山IC、早島ICからは約20分で訪れることができます。歴史と文化が息づくこの遺跡は、研究者や観光客にとっても貴重な訪問先となっています。

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