上林敬吉

上林敬吉：聖公会建築と聖路加国際病院を支えた建築家

上林敬吉（1884年-1960年）は、日本の建築史において重要な役割を果たした人物です。彼は米国聖公会宣教建築家の下で研鑽を積み、独自の建築設計事務所を設立、そして聖路加国際病院の建設・発展に貢献しました。その生涯と業績を詳しく見ていきましょう。

京都から世界へ：初期の経歴とガーディナー事務所

上林敬吉は1884年、京都市上京区に生まれました。幼少期から建築への関心を抱き、後に大きな影響を与えることになるジェームズ・ガーディナーと出会ったと推測されます。京都高等小学校を中退後、茨城県土木課を経て、1904年には横浜の下田建築合資会社に勤務。その後、1906年、東京で開業したばかりのジェームズ・ガーディナー建築事務所に入社します。

ガーディナー事務所での勤務は、上林敬吉の建築家としてのキャリアを大きく形成しました。日本聖公会の施設はもちろん、外国公館や貴族の邸宅といった数々の重要な建築プロジェクトに関わります。設計助手として図面を引く一方、現場監督として建築現場を指揮し、実践的な経験を積みました。並行して、夜間には正則英語学校に通い、英語能力の向上にも励みました。1911年には設計主任に昇進、事務所の中核を担う存在となっていきます。

独立とバーガミニとの協働：白い礼拝堂群

1925年、ガーディナーの死去を受け、上林敬吉は独立し、自身の設計事務所を設立します。ガーディナーの後継者として、そして新たなパートナーであるジョン・ヴァン・ウィー・バーガミニと共に、数々の建築プロジェクトを手がけました。

バーガミニとの協働は、上林敬吉の建築家としての才能をさらに開花させました。彼らは鉄筋コンクリート造を駆使し、平面計画、意匠、工法・構造を標準化することで効率的な建築生産を実現。同時に、それぞれのプロジェクトの特性に応じたカスタマイズも施し、洗練された「白い礼拝堂群」と呼ばれる特徴的な建築群を数多く生み出しました。これらの礼拝堂は、日本の教会建築に大きな影響を与えました。

聖路加国際病院と晩年

日中戦争の勃発により、1937年に事務所を閉鎖した上林敬吉は、聖路加国際病院の理事会から招聘を受け、病院の建築設計・管理に携わることになります。1938年から1960年に亡くなるまで、営繕課長として病院施設の増改築と管理に尽力しました。戦災からの復興にも貢献するなど、その活動は聖路加国際病院の発展に大きく寄与しました。

建築家としての遺産

上林敬吉は、ガーディナー事務所時代にはスペイン大使館やオランダ大使館といった重要な建築物を手がけました。そして独立後は、バーガミニとの協働による白い礼拝堂群だけでなく、独自の設計思想に基づいた数々の作品を残しました。彼の作品群は、西洋建築様式の導入と日本の建築技術の融合を巧みに実現した、日本の近代建築史における重要な遺産です。上林敬吉の生涯と仕事は、日本の建築界に多大な影響を与え、現在もなお、多くの人々に敬意と称賛をもって受け継がれています。彼の建築作品は、時代を超えて人々の心に語りかける、普遍的な美しさを持つと言えるでしょう。

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