上海日本人水兵狙撃事件

上海日本人水兵狙撃事件

1936年9月23日に発生した上海日本人水兵狙撃事件は、中華民国の共同租界で起きた日本人に対する暴力事件で、当時の日本と中国の緊張した関係を象徴しています。この事件は、歴史的な背景と相まって、後の日本の対中関係に大きな影響を与えることとなりました。

背景

事件が発生する約１年前から、中華民国では中国共産党による反日宣伝が広がり、多くの国民に深く浸透していました。1935年には、「抗日救国の宣言」が発表され、全国規模での抗日運動が加速しました。この影響で、日本に対する親しみは薄れ、日本人を狙ったテロ行為が増加していくことになります。さらに、蔣介石が指導する国民政府は、ナチス・ドイツとの協力を強化し、その結果、最新の武器を手に入れ、軍事力を向上させていきました。ドイツ軍事顧問団は、明確に日本を敵視する指導を行い、その結果として上海では対日防御が固められました。

過去にも日本人が狙われる事件が多発しており、これには汕頭邦人巡査射殺事件や中山水兵射殺事件などがありました。これらの事件は、反日感情が高まる中での日本人に対する暴力行為の一部でした。

事件概要

1936年9月23日の午後8時20分、上海の共同租界にある海寧路で、海防艦「出雲」の乗組員である水兵4名が散歩をしている時、突如として中国人によって銃撃されました。犯人は停車中のバスの陰に身を隠し、後ろから接近してきたのです。田港朝光一等水兵はその場で命を落とし、他の水兵たちも重傷を負う結果となりました。負傷者は至誠同書店に運ばれましたが、田港水兵はその場で絶命しました。

日本の領事館は即座に事件の解決を求め、上海工部局の担当者に犯人の逮捕と邦人の安全確保を指示しました。第三艦隊も即座に陸戦隊を派遣し、居留民の保護を強化しました。これに対し中国側も緊急態勢を敷き、事件の収束に向けて動き出しました。

事件は連鎖的に発生する一連の暴力事件と関係があり、外交当局は事態の収束を図ろうとしましたが、結果的にこのような暴力の流れを止めることはできませんでした。

事件の影響

この事件は、海軍の対応や外交政策にも深刻な影響をもたらしました。特に、海軍は対支膺懲のために強硬な姿勢を取るようになり、このことが後の日本と中国の関係悪化に繋がりました。蔣介石は、この状況を受けて日本との戦闘に踏み切る決意を固めることになります。

1937年には、盧溝橋事件を機に日本と国民党軍との間で戦闘が始まり、状況は一層厳しくなっていきました。事態はエスカレートし、全国規模の戦闘へと発展してしまいます。こうした一連の事件は日本国内での対中感情を大きく悪化させ、日本の対中政策に引き続き影を落とすこととなりました。

このように、上海日本人水兵狙撃事件は、当時の国際情勢や日中関係における重要な転換点を示す出来事となりました。

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