上田石

上田石：日本産新鉱物の魅力

2008年、日本の地質学研究に新たな1ページが刻まれました。香川県小豆島の花崗岩層から、これまで知られていなかった新鉱物が発見されたのです。国立科学博物館の鉱物学者らによるこの発見は、世界中の鉱物学研究者に衝撃を与えました。この新鉱物、その名は「上田石（Uedaite-(Ce)」です。

上田石は、その主要構成元素がセリウムであることから「セリウム上田石」とも呼ばれています。化学組成式は{Mn2+,Ce}{Al2Fe2+}(Si2O7)(SiO4)O(OH)で表され、単斜晶系という結晶構造を持つことが分かっています。鉱物学的な分類では、緑簾石グループに属し、特に褐簾石と近縁の関係にあります。

上田石の命名には、日本の鉱物学研究史における重要な出来事が背景にあります。京都大学の結晶学者である上田健夫氏は、褐簾石の結晶構造を詳細に解明するなど、この分野に多大な貢献をしました。その功績を称え、新鉱物には上田氏の名が冠せられたのです。これは、日本の鉱物学界における大きな栄誉であり、後進研究者への励みとなる出来事でした。

上田石の組成は、[マンガン]と[セリウム]といった希土類元素を豊富に含んでいる点が特徴的です。興味深いことに、上田石のマンガン二価イオン(Mn2+)がカルシウムイオン(Ca2+)に置換されると、セリウム褐簾石へと変化することが知られています。このことは、上田石とセリウム褐簾石が、組成や結晶構造において密接な関係にあることを示唆しています。

小豆島産出の上田石は、その希少性から、鉱物標本愛好家や研究者の間で高い関心を集めています。今後も、上田石に関する研究が継続され、その生成メカニズムや地質学的意義が明らかになることが期待されています。発見から既に十数年が経過していますが、上田石は、日本の地質学研究、ひいては世界の鉱物学研究に貢献する重要な発見として、その価値を失うことはありません。上田石の発見は、日本列島の地質学的歴史を紐解く上で重要な手がかりとなる可能性を秘めており、今後の研究の発展が待たれます。さらに、上田石の研究を通して、新たな鉱物の発見や、既存の鉱物の理解を深めることが期待されます。

上田石は、日本の鉱物学研究の進歩を示す象徴的な存在であり、これからも多くの研究者たちを魅了し続けることでしょう。

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