上田耕夫

上田耕夫：江戸後期を彩った絵師

上田耕夫（1760年～1832年）は、江戸時代後期に活躍した絵師です。円山応挙に師事したことで知られていますが、応挙十哲には名を連ねておらず、知名度は必ずしも高くありませんでした。しかし、京都や大坂を中心に活動し、同時代の人々には広く知られた存在だったと言えるでしょう。

生涯と交友関係

上田耕夫は、現在の大阪府池田市に位置する豪農の家に生まれました。本姓は坂上氏、名は莘、字は清茱、号は清水、耕夫など、複数の号を用いています。

田能村竹田の『竹田荘師友画録』には、耕夫の人となりや交友関係に関する興味深い記述が残されています。同書によると、耕夫は村瀬栲亭と親交が深く、華やかな暮らしぶりを送っていたと記されています。多くの文人を招いて宴を催し、自らも牡丹を数十種類も栽培するほど、ぜいたくな生活を送っていたようです。絵画においては与謝蕪村を好み、その画風を学びつつも、独自の境地を開拓したとされています。

耕夫は村瀬栲亭だけでなく、柳沢淇園、上田秋成、中島棕隠といった文化人とも交流を持っていました。晩年には大阪に移り住み、60歳を過ぎてから生まれた息子、上田耕冲、そしてその息子である上田耕甫も絵師となりました。耕夫と耕冲の墓は、東大阪市の妙徳寺にあると伝えられていますが、現在では確認できません。

画風

上田耕夫の画風は、初期は師である円山応挙の影響が強く見られますが、次第に与謝蕪村や呉春の画風を取り入れ、独自性を深めていきました。花鳥画を得意とし、繊細かつ写実的な描写で知られています。一方で、風景画や真景図においても、単なる写生にとどまらず、穏やかで独特の画趣を展開していました。写実的な描写の中に、独特の抒情性を漂わせる作風が特徴と言えるでしょう。

代表作

残念ながら、上田耕夫の作品については、現存する情報が限られています。より詳細な作品目録や、各作品に関する解説が必要とされています。今後の研究によって、さらに多くの作品が明らかになることが期待されます。

まとめ

上田耕夫は、円山応挙という巨匠の影響を受けながらも、独自の画風を確立し、同時代の文化人たちと交流を深めながら、江戸後期の絵画界に貢献した絵師です。豪華な生活と、多くの交友関係、そして独自の画風という彼の生涯は、当時の文化の一端を垣間見せてくれる貴重な存在と言えます。今後の研究を通して、さらに彼の作品や生涯に関する情報が明らかになることを期待したいです。

参考文献

* 木村重圭 「上田耕夫について」『兵庫県立歴史博物館紀要 塵界』第16号、2005年3月、pp.19-40

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