与謝蕪村

与謝蕪村

与謝蕪村（よさ ぶそん、1716年 - 1784年）は、江戸時代中期に活躍した日本の俳人であり、文人画家としても広く知られる存在です。本名は谷口信章で、通称は寅。彼の号「蕪村」は、中国の詩人である陶淵明の詩『帰去来辞』から取られているとされています。蕪村は独自の俳号として「宰鳥」や「夜半亭」を使い、画号にも多くのバリエーションがあります。

生い立ちと初期の経歴

蕪村は摂津国東成郡毛馬村（現在の大阪府大阪市都島区毛馬町）に生まれました。家系の伝承によると、母親は大坂に奉公していた女性であり、その経緯で蕪村が誕生したとされています。幼少期に一時期施薬寺に預けられ、後に丹後に戻った際には礼として屏風絵を贈ったと伝えられています。

20歳になると、蕪村は江戸に下り、早野巴人に師事して俳諧を学び始めました。彼は「時の鐘」の近くに住み、宰鳥という名義で俳句を書くことに情熱を注いでいきました。しかし、当時の江戸の俳壇は低俗化が進んでおり、蕪村はその現状に強い憧れとともに失望を感じていました。

修行の旅と発展

寛保2年（1742年）、27歳の時、師を失った後、下総国結城に移り住み、松尾芭蕉の行脚生活に憧れを抱き、その足跡をたどる旅に出ました。彼はこの旅の際、僧侶の姿を借りて日本各地を周遊し、絵を描くことで宿代を稼ぎました。この時間帯は蕪村の修行時代とも言え、作品の質が花開くことになります。この頃に作成した『歳旦帳』に、初めて「蕪村」と名乗ることになりました。

その後、また丹後地方へ戻り、絵画や俳句の創作に没頭しました。見性寺の住職から招かれた宮津にて地域の俳人たちとともに交流し、「はしだてや」という草稿も作成しました。また、与謝野町の施薬寺には彼の作品が今も残されていますが、実際にはその出来栄えに不満を抱き、燃やしてしまったという伝承も存在します。

晩年と影響

42歳の頃には京都に居を構え、与謝と名乗るようになりました。母の出身地にちなんで名乗ったとの説もある一方で、本来の流れを重視した可能性もあります。45歳頃に結婚し、一女をもうけましたが、51歳で讃岐に赴いた際には多くの作品を上梓しました。

最後は京都市下京区にある自宅で68歳の生涯を閉じ、人々からは俳人としての業績が高く評価されました。死因は従来、重症下痢症とされていましたが、近年の調査結果では心筋梗塞であると解釈が変更されています。彼の辞世の句として、「しら梅に明（あく）る夜ばかりとなりにけり」が残っています。

芭蕉への影響と評価

蕪村は松尾芭蕉や小林一茶と並ぶ江戸俳諧の巨匠として知られ、特に俳画の発展にも寄与しました。彼は独自の写実的表現力を持ち、時代の流れを反映した作品を多く残しています。一方で、彼の才能が再評価されるのは明治時代以降であり、正岡子規の研究により彼の俳句は新たに光を当てられることになりました。

与謝蕪村の作品や彼に関連するイベントは、現在でも多くの詩人や研究者に影響を与え続けています。彼の日を記念する「蕪村忌」は毎年旧暦の12月25日に行われ、さまざまな俳句が詠まれています。

もう一度検索