上田藤夫

上田藤夫：華麗なるプレーと厳正なジャッジの軌跡

上田藤夫（1912年3月6日 - 2003年2月25日）は、1930年代から1940年代にかけて活躍したプロ野球選手にして、名審判員として名を馳せた人物です。ハワイ準州（当時アメリカ合衆国自治領）で生まれ、広島県を本籍地として持つ上田は、1937年、マウイ島の高校卒業後、来日。ジミー堀尾の誘いを受け、阪急軍に入団しました。

選手としての上田は、主に二番打者として活躍しました。その持ち味は、絶妙なバントとランエンドヒット。俊敏な動きと巧みな技術で、相手チームを翻弄しました。打撃だけでなく、堅実な守備でも知られており、特に遊撃手としての守備力は高く評価されていました。その実力は、1940年、NPB初のベストナイン（遊撃手部門）受賞という栄誉に輝いたことからも明らかです。

上田は、常に研究熱心でした。阪急軍監督だった三宅大輔から積極的に野球理論を学び、技術向上に努めました。その努力は記録にも表れています。1938年9月24日、名古屋軍戦（甲子園）では遊撃手として12補殺というプロ野球記録を達成。さらに1940年11月6日の巨人戦（後楽園）では、1試合6併殺という驚異的な記録を樹立しました。

太平洋戦争中は、多くの日系アメリカ人選手がアメリカ政府の召喚命令を受けて帰国する中、上田は日本の国籍を取得し、日本に留まりました。戦況の悪化により、プロ野球は一時中断を余儀なくされましたが、上田は1944年まで現役を続行しました。

戦後、プロ野球が再開されると、上田は阪急軍に復帰しました。しかし、年齢による衰えは否めず、1948年、現役を引退することになります。選手時代は、生真面目な性格で禁酒禁煙を貫いていましたが、時には宴席でハワイアンを披露するなど、意外な一面も持ち合わせていました。

引退後は、審判員としての道を歩み始めます。1949年、パシフィック・リーグの審判部に入局、1955年には関西審判部所属となりました。1963年4月には、パ・リーグ審判部長に就任。正確なジャッジには定評があり、特に二塁塁審として、二遊間の併殺プレーのジャッジには、歴代随一と評されるほどの実力を持っていました。1967年まで審判部長を務めた後、審判員としてのキャリアに幕を閉じました。

その審判としての力量の高さを示すエピソードとして、阪急軍時代、後楽園球場での試合で左翼ポール際に本塁打を放った際、相手チーム監督からファウルボールだと抗議を受け、試合が約1時間中断したという出来事があります。これにより、上田の正確なプレーと、その実力の高さが改めて証明されたと言えるでしょう。

上田藤夫は、選手として、そして審判員として、プロ野球界に多大な貢献を果たした、まさにレジェンドと言える存在です。その輝かしい功績は、今もなお語り継がれています。

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