上田都史

上田都史

上田都史（うえだ とし、1906年9月23日 - 1992年8月30日）は、日本の俳人であり、小説家としても知られています。その生涯は、俳句の世界に深く根ざし、社会に対する鋭い視点を持つものでした。

生涯

上田都史は京都に生まれました。美濃の俳人である上田聴秋を祖父に持ち、俳句の才能は幼い頃から育まれました。本名は馮介（ひょうかい）といい、当初は祖父から与えられた瓢海の号を用いていましたが、後に斗志、そして都史と改名しました。

学歴としては、東京中学校を中退後、江田島の海軍兵学校に在籍しました。俳句においては、尾崎放哉、種田山頭火、荻原井泉水らに私淑し、彼らの自由な作風に影響を受けました。1934年には個人誌『純粋』を創刊し、自らの俳句を発表する場を設けました。また、放哉や山頭火の評伝を著し、彼らの作品と生涯を広く世に知らしめるきっかけを作りました。

1948年から1969年までの間、精神病院である駒木野病院に事務長として勤務しました。この経験は、彼の人生観や社会観に大きな影響を与えました。辞職後、精神病院における不当な拘束の実態を内部告発した『むなしい壁との対話』を刊行し、社会に問題提起を行いました。

上田都史の墓所は、八王子市西浅川町の金南寺にあります。境内には彼の句碑が建てられており、その功績を偲ぶことができます。

業績

上田都史は、俳人、小説家として数多くの作品を発表しました。特に、尾崎放哉や種田山頭火といった自由律俳句の俳人の評伝は、彼らの作品を世に広める上で重要な役割を果たしました。また、精神病院での勤務経験を基にした作品は、社会に対する鋭い批判精神を示しており、多くの人々に衝撃を与えました。

著書（一部）

『現代俳句の展望』
『人間尾崎放哉』
『俳人山頭火 その泥酔と流転の生涯』
『むなしい壁との対話 わが精神病院記』
『小説精神病院』
『自由律俳句文学史』
『小説種田山頭火』
『山頭火の虚像と実像 その名句195句の鑑賞』
* 『放哉漂泊の彼方 人間存在・人間不在の相剋 名句鑑賞103句』

評価

上田都史は、俳句の世界に新しい風を吹き込んだ俳人として、また、社会に対する鋭い問題意識を持った小説家として高く評価されています。彼の作品は、自由律俳句の可能性を広げるとともに、社会の矛盾や人間の心の闇を描き出し、読者に深い感動と省察を与えています。彼の功績は、日本の俳句史、文学史において、重要な位置を占めています。

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