上田聴秋

上田聴秋：明治期を彩った俳人の生涯

上田聴秋（うえだ ちょうしゅう）は、嘉永5年（1852年）に美濃国大垣に生まれ、昭和7年（1932年）に没した明治期の俳人です。本名を上田肇（うえだ はじめ）といい、聴秋は彼の俳号でした。不識庵とも号し、花本聴秋の名でも知られています。花本流派の11世宗匠として、明治から大正にかけての京都俳壇において重要な存在感を示しました。

生い立ちと俳句への道

上田聴秋は、大垣藩士の家に生まれました。幕末の京都俳壇で重鎮であった八木芹舎（花本芹舎）に師事し、俳句の道を歩み始めます。その後、江戸に出て慶應義塾に入学し、見聞を広めました。慶應義塾では、後に鉄道官僚として活躍する松本荘一郎の面倒を見たという逸話も残っています。

明治17年（1884年）に京都へ帰郷した聴秋は、俳句結社「梅黄社」を設立し、俳句雑誌『鴨東集』を創刊しました。この雑誌は、後に『俳諧鴨東集』、『俳諧鴨東新誌』と改題され、京都を中心とした俳句文化の発展に大きく貢献しました。

俳人としての評価

明治32年（1899年）には、雑誌「太陽」が主催した「俳諧十二傑」の投票において、老鼠堂永機、正岡子規、三森幹雄、尾崎紅葉、角田竹冷、巖谷小波、雪中庵雀志、幸堂得知、内藤鳴雪、桂花園桂花らと共に選出されました。これは、当時の俳句界における聴秋の評価の高さを物語るものです。

聴秋の門下からは、茶谷霞畝をはじめとする多くの俳人が育ちました。また、竹内菊園の句碑など、彼が関わった句碑も現存しており、その影響力を今に伝えています。

多才な人物

上田聴秋は、俳人としてだけでなく、書家としても優れた才能を発揮しました。彼の書は、力強く、かつ繊細であり、多くの人々を魅了しました。俳句と書、二つの芸術を通して、彼は豊かな表現世界を築き上げました。

親族

実兄の小原適（おばら かなう）は男爵であり、貴族院議員を務めました。また、孫の上田都史（うえだ とし）も著名な人物です。

句集

『鶴鳴集』
『聴秋百吟』

参考文献

* 福澤諭吉研究センター(編)『慶應義塾入社帳 第1巻』慶應義塾、1986年

上田聴秋は、激動の時代を生きた俳人として、伝統を守りながらも新しい表現を追求し続けました。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛され、読み継がれています。

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