上石津ミサンザイ古墳

上石津ミサンザイ古墳：古代の壮大な墳墓

上石津ミサンザイ古墳は、大阪府堺市西区石津ヶ丘に位置し、百舌鳥古墳群の南部に位置する前方後円墳です。百舌鳥古墳群を構成する重要な古墳の一つとして、その歴史的価値は高く評価されています。この古墳は、実際の被葬者は明らかではありませんが、宮内庁によって「百舌鳥耳原南陵（もずのみみはらのみなみのみささぎ）」として第17代履中天皇の陵に治定されています。また、世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」の構成資産の一部として登録されており、国内外から注目を集めています。

古墳の名称と由来

この古墳は、「石津ヶ丘古墳」や「百舌鳥陵山古墳」とも呼ばれています。「ミサンザイ」という名称は、「ミササギ（陵）」が転訛したものと考えられています。江戸時代の絵図などには「履中天皇陵」という表記が見られ、古くから天皇陵として認識されていたことが伺えます。地名の「上石津」は、堺市に編入される前の泉北郡神石村の大字であり、現在の堺区石津町が集落の中心でしたが、古墳自体は西区に位置しています。

古墳の概要と特徴

上石津ミサンザイ古墳は、百舌鳥古墳群の南西部に位置する前方後円墳で、大阪湾からの眺望を意識して場所と墳丘の方向が決定されたと考えられています。標高15 - 22mの台地の西縁部に、海からよく見えるように、かつての海岸線と墳丘主軸線を平行させるように、前方部を南に向けて造られています。墳丘は3段に築成されており、その規模は墳丘長365メートル、後円部直径205メートル、高さ27.6メートル、前方部幅235メートル、高さ25.3メートルと、大仙陵古墳（仁徳天皇陵古墳）、誉田御廟山古墳（応神天皇陵古墳）に次ぐ、全国第3位の規模を誇ります。墳丘の両側くびれ部には造り出しがありますが、東側の造り出しは崩壊が進み縮小しており、濠の水位が下がった時のみに確認できます。

近年の航空レーザー測量により、後円部の頂上と前方部の頂上には、独立した円形の土壇（円丘）が築かれていることが明らかになりました。特に、前方部頂上の円形の土壇は斜面に沿って2段に築かれており、他に例を見ない珍しい構造です。この2段の土壇内には埋葬施設が存在すると推測されていますが、後円部の埋葬施設や構造、副葬品などはまだ解明されていません。

墳丘の周囲には盾形の周濠があり、前方部前面で約62メートル、後円部背面で約70メートルの幅広の濠となっています。西側の濠には大規模な盛土による堤が築かれています。現在の周濠は一重ですが、調査により幅11 - 25m、深さ0.6 - 1.3m程の外濠が全周していたことが明らかになっており、土の状況などから水のない空濠だったと推定されています。

発掘調査と出土品

1986年には、後円部頂上あたりから埴輪が盗掘される事件がありましたが、それらは全て回収されています。回収された埴輪は、蓋型、家型、靭形などの多量の形象埴輪で、中でも矢を収納する靫を模した靭形埴輪は、高さ1.4メートル、最大幅1.1メートル程の超大型埴輪でした。古墳の墳丘や埴輪などから、大仙陵古墳よりも早い5世紀初頭に築造されたと考えられています。また、江戸時代の記録では、後円部中央に大きなくぼみがあったとされており、すでに埋葬施設は盗掘を受けている可能性があります。

外濠の周囲には、かつて七観山古墳、七観音古墳、寺山南山古墳、石塚古墳、狐塚古墳など10基前後の陪塚があったとされていますが、現在は七観音古墳・寺山南山古墳の2基のみが残っています。七観山古墳からは多量の副葬品が出土しており、副葬品を埋納するための陪塚であった可能性があります。これらの陪塚も、上石津ミサンザイ古墳と同時期に作られたと考えられています。

世界遺産登録とアクセス

2019年7月6日、上石津ミサンザイ古墳は、第43回世界遺産委員会において「百舌鳥・古市古墳群－古代日本の墳墓群－」として世界遺産に正式登録されました。この古墳は、百舌鳥古墳群の一部として、その歴史的・文化的な価値が世界的に認められたことになります。

アクセスは、JR阪和線上野芝駅から履中天皇陵拝所まで徒歩約6分、南海高野線堺東駅からはバスで南陵通四丁下車後、徒歩5分です。

上石津ミサンザイ古墳は、古代日本の権力者の墓制を示す貴重な遺産であり、その壮大な規模と独特の構造は、訪れる人々を魅了し続けています。今後の調査研究により、さらなる歴史的真実が明らかになることが期待されます。

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