誉田御廟山古墳

誉田御廟山古墳（こんだごびょうやまこふん）

大阪府羽曳野市に位置する誉田御廟山古墳は、古市古墳群を構成する巨大な前方後円墳です。別名、誉田山古墳とも呼ばれ、その壮大な規模は全国で2番目を誇ります。宮内庁により第15代応神天皇の陵墓として治定されていますが、実際の被葬者は明らかになっていません。2019年には百舌鳥・古市古墳群の一部として世界文化遺産に登録され、国際的にもその価値が認められました。

古墳の概要

5世紀初頭に築造されたと考えられているこの古墳は、立地条件が特異です。安定した段丘と不安定な氾濫原にまたがって築かれており、その形状から、既存の二ツ塚古墳を避けるように造られたことがわかります。そのため、周濠や内堤には歪みが見られます。また、前方部の一部が崩落しているのは、過去にこの地を襲った大地震の影響と考えられています。古墳の管理は宮内庁が行っており、立ち入り調査が制限されているため、詳しい学術的な調査は進んでいません。しかし、古墳を覆う植生や生態系は良好に保たれており、これは隣接する誉田八幡宮の神域として保護されてきたことによります。内濠にはヒメボタルが生息しており、自然環境の豊かさを示しています。

規模

羽曳野市の公式発表によると、墳丘長は約425メートル、後円部直径は約250メートル、後円部高さは約35メートル、前方部幅は約300メートル、前方部高さは約36メートルとされています。ただし、古墳の裾をどこにするかによって諸説があり、長さには異論もあります。しかし、全長約420メートルという墳丘長は、大仙陵古墳に次ぐ規模であり、体積は143万3960立方メートルに達します。これらの数値からも、日本で2番目に大きな王陵であることがわかります。

周濠

古墳の周囲には二重の濠が巡らされており、内濠の外には幅約48メートルの中提があります。さらにその外側には、築造当時、幅約35メートルの外濠があったと推定されています。外濠を囲む外堤は幅約15メートルとされています。濠の水深は170～250センチ[[メートル]]とかなり深く、大仙陵古墳と比較しても深いのが特徴です。二重の濠と外堤は西側にのみ築造され、東側には外濠や外堤は確認されていません。

出土品

誉田御廟山古墳からは、多種多様な埴輪が出土しています。円筒埴輪、キヌガサ形埴輪、家形埴輪、盾形埴輪、甲冑形埴輪、草摺形埴輪、水鳥形埴輪などがあります。また、内濠からは、土師器とともに魚形土製品が10個出土しており、鯨、烏賊、蛸、鮫、海豚などを模したものが見つかっています。これらの土製品の解釈には、様々な説が存在します。さらに、円筒埴輪や円形埴輪、後円部側の外濠の外部からは馬形埴輪なども出土しています。直径74センチ[[メートル]]の笠形木製埴輪も副葬されており、木製製品が外堤にも立てられていた可能性を示唆しています。

陪墳

古墳の周辺には、指定を受けている陪墳が5基あります。その他の陪墳は民有地となっており、破壊が進んでしまったものもあります。

盾塚（たてづか）: 帆立貝式古墳で、誉田山古墳の北東に位置します。築造年代は誉田山古墳より先行する可能性があり、長大な割竹形木棺からは、銅鏡、玉類、短甲、衝角付冑、鉄製刀剣、鏃、筒型銅器、碧玉製釧、竹櫛、盾10枚などが出土しました。
珠金塚（しゅきんづか）: 方墳で、盾塚の西側にあります。組合せ木棺を納めた二つの粘土槨があり、銅鏡、玉類、短甲、衝角付冑、鉄製刀剣、竹櫛、盾や、金製丸玉などが出土しました。甲冑は鋲留式です。
古市丸山古墳（ふるいちまるやまこふん）: 円墳で、直径45メートルと大規模です。金銅製の鞍金具などの馬具（国宝、誉田八幡宮所蔵）が出土しました。これらの馬具は、朝鮮半島からの舶載品を含んでいると推測されています。
鞍塚（くらづか）: 円墳で、盾塚の北にあります。箱形木棺から銅鏡、玉類、甲冑、武器、馬具などが出土しており、盾塚や珠金塚よりも築造年代は新しいと考えられています。
東山（ひがしやま）: 方墳で、天皇陵の西に位置します。円筒埴輪が多数見つかっています。
栗塚（くりつか）:一辺43メートルの方墳。多数の埴輪が出土しています。
* 東馬塚[古墳]: 一辺30メートルの方墳。円筒埴輪が出土しています。

二ツ塚古墳

拝所の正面にある二ツ塚古墳は、文久年間（1861年～1863年）の修築以降に現在の位置に移されました。それ以前は、後円部の方から参道があり、六角形の宝殿まで石段が続いていました。

被葬者と造営年代

円筒埴輪や須恵器の型式、年輪年代測定法による調査結果から、この古墳は5世紀の第1四半期に築造されたと推定されています。被葬者については、古くから応神天皇陵との伝承がありますが、その治世については諸説あり、特定には至っていません。しかし、総合的に見ると、誉田御廟山古墳が応神天皇陵である蓋然性は高いと考えられています。ただし、その場合、大仙陵古墳を仁徳天皇陵とする従来の比定との間で矛盾が生じ、古墳編年にも不整合が生じるという問題も指摘されています。

付随の施設・神社・寺

古墳敷地内には、宮内庁書陵部の古市陵墓監区事務所があります。また、古墳の南側には日本最古の八幡宮である誉田八幡宮があり、室町時代に描かれた『誉田宗廟縁起絵巻』を所蔵しています。この神社は、天皇陵の存在を前提として発生・発達したと考えられています。


誉田御廟山古墳は、その巨大な規模、多様な出土品、そして歴史的な背景から、古代日本の姿を今に伝える貴重な文化遺産です。

もう一度検索