上総山本駅

上総山本駅：久留里線の歴史を刻んだ、今はなき駅

静かな田園風景が広がる千葉県君津市。かつてこの地には、国鉄久留里線の上総山本駅が存在していました。本稿では、その歴史と周辺環境、そして廃駅となった経緯について詳しく見ていきます。

開業から廃駅まで

上総山本駅が開業したのは、昭和12年（1937年）4月20日。久留里線が上総亀山駅まで全線開通した翌年のことです。同時期に開業した東横田駅、下郡駅とともに、地域の交通を支える拠点となりました。しかし、戦後の昭和22年（1947年）1月20日頃、利用客の減少により、上総山本駅は営業を休止せざるを得なくなります。東横田駅、下郡駅も同様の運命を辿りました。

その後、下郡駅と東横田駅はそれぞれ昭和31年（1956年）7月1日、昭和33年（1958年）に営業を再開しますが、上総山本駅は再開することなく、昭和31年（1956年）7月1日に正式に廃駅となりました。久留里線において、唯一廃駅となった駅として、その歴史に特異な位置を占めています。

駅周辺の環境

上総山本駅跡地周辺は、現在も広大な水田が広がるのどかな場所です。かつて駅があった面影はほとんど残っておらず、静寂に包まれています。駅周辺には、圓明院や秋葉神社といった史跡や、国道410号、久留里街道（国道410号旧道）といった道路が通っています。これらの地理的な状況も、駅の利用状況に影響を与えた可能性があります。

廃駅に至った背景

上総山本駅が廃駅となった背景には、利用客の減少という要因が大きく影響していると考えられます。戦後の経済状況や交通事情の変化、自動車の普及など、様々な要因が複雑に絡み合っていたと推察されます。他の駅が営業再開したのに対し、上総山本駅が再開されなかった理由は、利用客数の回復が見込めなかったこと、あるいは維持費用の問題などが考えられます。詳細な資料は残されていませんが、周辺地域の状況を鑑みることで、その経緯を推測することができます。

資料と参考文献

上総山本駅に関する資料は、現存するものが少ないのが現状です。駅の歴史を正確に知るためには、地元の古老への聞き取り調査や、地方史の研究など、さらなる調査が必要となるでしょう。例えば、『日本鉄道旅行地図帳3号 関東1』（今尾恵介監修、新潮社、2008年）にはキロ程などの情報が記載されていますが、休止に関する記述はありません。

まとめ

上総山本駅は、昭和初期から昭和中期にかけて、地域住民の生活を支えた重要な交通拠点でした。しかし、時代の変化と共に利用客が減少し、廃駅という運命を辿りました。その歴史は、地域の変遷や交通史を考える上で貴重な事例と言えるでしょう。現在、駅舎は残っておらず、静かな田園風景の中にその存在を偲ぶのみとなっていますが、久留里線の歴史を語る上で、決して無視できない存在と言えるでしょう。

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