上野東急

「上野東急」は、東京都台東区上野において、かつて東急レクリエーションが運営していた映画館です。1957年1月19日に開館し、2012年4月30日にその歴史に幕を下ろすまで、半世紀以上にわたり上野の地で多くの映画ファンに親しまれました。

その始まりは1957年の開館で、最初に上映されたのはランドルフ・スコット主演の『十人のならず者』でした。開館後、運営会社の組織再編を経て、1966年11月には東急レクリエーションの前身にあたる新日本興業株式会社に吸収されています。

1977年8月には、舛田利雄監督のアニメ映画『宇宙戦艦ヤマト』が封切られ、後に著名なアニメ監督となる難波日登志氏が、出身地の新潟県からわざわざ上野まで観に来たというエピソードが氏のSNSで語られています。

1981年10月より一時休館した後、1982年12月4日には地上6階建ての新しい複合ビル「上野とうきゅうビル」として生まれ変わりました。この建て替えを機に、ビル1階に東映系の封切館「上野東映」が、そして3階に洋画ロードショー館である「上野東急」が入り、2スクリーン体制での運営がスタートしました。リニューアル後の最初の作品として上映されたスティーヴン・スピルバーグ監督作『E.T.』は記録的な大ヒットとなり、新たなスタートを飾るにふさわしい門出となりました。

1998年3月には、1階の上野東映が「上野東急2」と名称変更され、東映系の作品から松竹・東急系の洋画ロードショー作品を主に上映する形に転換しました。これにより、2スクリーンとも東急系列のロードショー作品を上映する劇場として位置づけられるようになります。

しかしながら、2000年代に入ると、上野エリアの映画館を取り巻く環境は厳しさを増します。2003年8月末には上野東宝劇場・上野宝塚劇場が、2006年5月には上野セントラルが相次いで閉館しました。これにより、上野東急と上野東急2は番組編成の自由度が高まり、前者が丸の内ルーブルや丸の内ピカデリー系の作品、後者がTOHOシネマズ日劇系の作品を中心に上映するようになりました。

同時に、錦糸町や亀有など、近隣地域に開業した大規模なシネマコンプレックスに観客が流れたことも、経営を圧迫する要因となりました。こうした状況の中、2012年1月30日、東急レクリエーションは同年4月末での閉館を発表しました。

そして2012年4月30日、ピーター・バーグ監督の『バトルシップ』の最終上映となる午後8時40分の回をもって、「上野東急」はその55年間の歴史に静かに幕を下ろしました。同じ上野とうきゅうビル内で営業していた温浴施設「ラドン&サウナ 東泉」も、翌5月1日をもって閉店しています。

閉館後の上野とうきゅうビルの跡地は、2012年10月末に約13億円で東急電鉄に売却され、当初は解体後にマンションが建設される計画でした。しかし、この計画は変更され、2016年3月1日には「アパホテル京成上野駅前」がグランドオープンし、現在に至っています。なお、上野東急が閉館してから、2017年11月4日に上野フロンティアタワー内にTOHOシネマズ上野が開業するまでの期間、上野駅周辺で通常の映画を上映する映画館は、成人映画専門の上野オークラ劇場のみという状況が続いていました。

閉館時点でのデータとして、所在地は東京都台東区上野2丁目14-26でした（現在の「アパホテル京成上野駅前」の場所にあたります）。観客定員数は、3階の上野東急が206席、1階の上野東急2が234席でした。

上野東急には、学生時代にアルバイトをしていた著名人もおり、落語家の三遊亭円楽氏（7代目）や、お笑いコンビ「ロビンソンズ」の北澤ひとし氏などが経験者として知られています。また、2008年から台東区で開催されている「したまちコメディ映画祭in台東」では、第1回から第4回（2011年）まで、上野東急が公式会場の一つとして使用されていました。このように、地域に根差した映画館として、文化的なイベントにも貢献していた側面も持っています。

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