上野照剛

上野照剛

上野照剛（うえの しょうごう、1943年 - ）は、日本の医用生体工学者であり、東京大学名誉教授です。生体磁気学の分野における第一人者として知られています。また、日本応用磁気学会や日本生体磁気学会の会長を歴任するなど、学会活動にも尽力しました。

人物・経歴

福岡県出身で、福岡県立三池高等学校を卒業後、1966年に九州大学工学部電子工学科を卒業しました。その後、1972年に九州大学大学院工学研究科電子工学専攻を修了し、工学博士の学位を取得しました。大学では、原田耕介教授に師事し、電気工学、特に磁気工学の研究に携わりました。

1976年に九州大学工学部助教授に就任し、1986年には同大学の教授に昇進しました。この間、磁気を用いた生体計測や治療に関する研究を精力的に進め、生体磁気学の基礎を築きました。

1990年には日本臨床神経生理学会の評議員に選出され、臨床医学の分野にも貢献しました。1994年には東京大学医学部教授に転任し、医学と工学の融合研究を推進しました。1995年には、電気学会電磁界生体影響問題調査特別委員会の副委員長を務め、電磁界の生体影響に関する研究にも携わりました。

1999年には、日本生体磁気学会の会長に就任しました。同年には、国際電波科学連合（URSI）のCommission K（Electromagnetics in Biology and Medicine）の委員長にも選出され、国際的な活動も展開しました。2001年には日本応用磁気学会の会長に就任し、磁気工学の発展に貢献しました。さらに、2002年には日本エム・イー学会の会長も務めました。

上野教授は、2010年に国際生体電磁気学会のd’Arsonval賞を受賞しました。この賞は、生体電磁気学分野における顕著な貢献を称えるものであり、上野教授の研究業績が高く評価されたことを示しています。

研究分野

上野教授の研究分野は、医用生体工学、特に生体磁気学が中心です。具体的には、生体磁気計測、磁気刺激による神経活動制御、電磁波の生体影響評価などがあります。

生体磁気計測では、脳磁図（MEG）や心磁図（MCG）などの技術を用いて、脳や心臓の活動を非侵襲的に計測する方法を開発しました。これらの技術は、脳機能の研究や心臓疾患の診断に役立っています。

磁気刺激による神経活動制御では、経頭蓋磁気刺激（TMS）などの技術を用いて、脳の特定の部位を刺激することで、運動機能や認知機能の改善を目指す研究を行っています。これらの技術は、神経疾患の治療やリハビリテーションに役立つことが期待されています。

また、電磁波の生体影響評価では、携帯電話や高圧送電線などから発生する電磁波が人体に与える影響を調査しました。これらの研究は、電磁波の安全基準策定に貢献しました。

著書

上野教授は、多くの著書や論文を発表しています。主な著書には、以下のものがあります。

『医用生体工学』（神谷暸, 井街宏と共著）培風館、2000年
『生体と電磁界』（重光司, 岩坂正和と共編）学会出版センター、2003年

これらの著書は、医用生体工学や生体磁気学の分野における重要な参考書として、多くの研究者や学生に利用されています。

まとめ

上野照剛教授は、日本の医用生体工学、特に生体磁気学の分野において、多大な貢献をしてきました。その研究は、医学と工学の融合を推進し、医療技術の発展に貢献しています。また、学会活動や教育活動にも積極的に取り組み、多くの研究者を育成しました。上野教授の功績は、今後も医用生体工学分野における発展を支え続けることでしょう。

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