上野義美

上野義美：日本の音楽シーンを彩る、革新的なプロデューサー

上野義美氏は、日本の音楽業界において、プロデューサー、イベントプロデューサーとして類まれな功績を残した人物です。スパイラルアーツ代表、BOSSATRONICA代表を務め、その活動は多岐に渡り、常に時代の先端を走り続けてきました。

北海道ニセコ出身の上野氏は、上京後、新宿のキャバレーでドラマーとしてキャリアをスタートさせます。その後、ミュージシャンとしての経験を経て、小沢音楽事務所系列のアルト企画に所属。そこで、数々のアーティストのマネージメントに携わり、音楽業界での基盤を築き上げました。

BOWWOWへの貢献と、時代の先駆けとなるプロモーション

1976年12月、上野氏はロックバンドBOWWOWをデビューさせます。メンバーは全員、上野氏によるオーディションで選抜され、その斬新な発想は、当時としては画期的でした。ディープパープルやベイシティローラーズといった、洋楽アーティストを参考にメンバーを育成。さらに、日本初のステージトラックを開発するなど、プロモーションにおいても革新的な手法を取り入れ、大きな話題を呼びました。デビューに際しては音楽評論家の渋谷陽一氏にも協力を仰ぎ、NHK「ヤングジョッキー」での日本人初のスタジオライブを実現させるなど、積極的な姿勢が成功を収めました。日本青年館でのワンコインコンサートは3,000人を動員する大盛況となり、追加公演を行うほどの人気ぶりでした。ファーストアルバムは、当時としては異例の12,000枚プレスにも関わらず、即日完売という記録的な売上を達成しました。

ザ・ロッカーズと、新たな挑戦

1980年9月には、陣内孝則率いるザ・ロッカーズを博多でスカウト。「めんたいロック」というキャッチコピーを冠し、デビュー前に音楽雑誌「Player」の表紙を飾るなど、大きな注目を集めました。しかし、レコードの売上は伸び悩みました。そこで上野氏は、陣内氏に新たな可能性を見出そうと、オフ・ブロードウェイでミュージカル化された『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』への出演を提案します。当初は抵抗した陣内氏でしたが、7役を早変わりで演じるという挑戦的な役どころを見事にこなし、特にサディスティックな歯科医役は話題を呼びました。この舞台をきっかけに、脚本家の倉本聰氏に才能を見出され、テレビドラマ『ライスカレー』への出演へと繋がります。この経験は、陣内氏にとって俳優への転身という大きな転機となりました。ザ・ロッカーズの活動はその後解散しましたが、上野氏の慧眼と、陣内氏への適切なアドバイスが、彼の俳優としての成功を支えたと言えるでしょう。

ミニFM局KIDSの設立と、若手アーティストの発掘

1982年8月、上野氏は原宿で売られていたハワイの放送局のエアチェック・カセットテープをヒントに、日本初のミニFM局「KIDS RADIO STATION」（通称：KIDS）を青山に設立します。このラジオ局は、後にC-C-Bの前身であるココナッツ・ボーイズ、パイナップルボーイズ、オレンジ・シスターズなどのデビューのきっかけとなり、多くの若手アーティストを育成する場となりました。そして、KIDSで自主制作された企画カセットテープ『RASPBERRY AVENUE』は、2012年にCD化され、改めてその歴史的な価値が再認識されています。このミニFM局は、映画『波の数だけ抱きしめて』のフォーマットの一つにもなったとされています。

音楽イベント開催と、次世代アーティストへの支援

上野氏の活動は、ラジオ局の設立にとどまりません。1984年8月には、鎌倉の材木座海岸でアマチュアの登竜門であるマリンブルー音楽祭を立ち上げ、徳永英明や山本英美といった後のスターを発掘しました。また、原宿のCOXYビルに車を使ったパフォーマンスを仕掛けたり、原宿東郷神社でアマチュアロックミュージカル「はらじゅくグラフィティ」をプロデュースするなど、常に斬新な企画を展開しました。

スパイラルアーツ設立と、新たな才能の開花

1990年9月には、スパイラルアーツを設立。筋肉少女帯、大槻ケンヂ、松本英子といった個性豊かなアーティストを世に送り出し、その活動はますます多様化していきます。2004年にはゴスロリユニット「黒色すみれ」のプロデュース、2008年にはボサノヴァ、ジャズ、ポップスをエレクトロニカで融合させたスタイリッシュジャズレーベル『BOSSATRONICA』を立ち上げ、Ryu Mihoといったアーティストの才能を開花させました。

上野義美氏のキャリアは、常に時代の先を読み、音楽業界に新しい風を吹き込む数々の挑戦の連続でした。その先見性と行動力、そして人材育成への情熱は、日本の音楽シーンに計り知れない影響を与え続けています。彼の功績は、これからも音楽史に刻み込まれ続けることでしょう。

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