上開発駅

石川県能美市上開発町に位置していた、かつて北陸鉄道能美線が運行されていた時代の鉄道駅、上開発駅（かみかいほつえき）について解説します。

この駅は、地域の交通網の一端を担い、特に貨物輸送において重要な役割を果たしましたが、能美線の廃止に伴いその歴史に終止符を打ちました。

歴史

上開発駅は、能美電気鉄道が開業した大正14年（1925年）3月21日に産声を上げました。開業間もない同年10月には早くも側線が設けられるなど、当初から駅機能の拡充が進められていたことが伺えます。

昭和に入り、昭和13年（1938年）10月27日には、安全性の向上と利便性の向上を図るため、木造であったホームの擁壁がコンクリート製に改められ、ホーム長も従来の9メートル14センチから15メートルへと延伸される改良工事が行われました。

地域の産業活動と密接に関わる駅として、特に貨物取り扱いは重要な機能でした。かつては単なる側線だけでなく、上開発地区に置かれていた産業組合支部へと通じる貨物専用の引き込み線が敷設されており、地元で生産された肥料や米などがこの引き込み線を使って貨車に積み込まれ、各地へと出荷されていました。しかし時代の変化と共に貨物輸送の形態も変わり、昭和38年（1963年）7月19日には貨物側線が廃止されました。

その後、旅客駅としての運用が続けられましたが、北陸鉄道能美線自体の存続が困難となり、昭和55年（1980年）9月14日に路線が廃止されるとともに、上開発駅もその役目を終え、廃駅となりました。

駅構造

上開発駅は地上駅でした。開業当初から側線を有し、前述の通り、産業組合支部の倉庫へと繋がる貨物専用の引き込み線も備えていました。これは、上開発駅が単に旅客輸送を行うだけでなく、地域の物流拠点としての役割も果たしていたことを示しています。特に引き込み線を通じて、肥料や米といった地元の産品が出荷されていたことは、駅が地域の経済活動に深く根差していたことの証と言えるでしょう。

貨物取り扱いが行われていた時代には、複数の線路を備えた駅構内だったと推測されます。しかし、貨物側線の廃止を経て、晩年の駅構造は単式ホーム1面1線のみとなっていました。

旅客用の設備としては、ホーム上に小さな待合室が設けられており、列車の到着を待つ人々の雨風をしのぐ場所となっていました。また、上開発駅は終始無人駅であり、駅員が常駐することはありませんでした。

現状

廃駅となってから長い年月が経過した現在、上開発駅のあった場所は、かつての鉄道施設があった面影をほとんど留めていません。

駅構内として利用されていた土地は、現在ではアスファルト舗装が施され、地域の健康増進を目的とした「ヘルスロード」の一部として整備されています。かつてホームや線路があった場所を、多くの人々が散策やジョギングなどに利用しており、鉄道駅であった往時を知る手がかりは少ない状況です。

しかしながら、かつての駅に隣接して建てられていた建物は、2014年時点の情報によれば、ほぼ当時のままの姿で残存しており、駅があった場所の歴史を偲ぶ数少ない手がかりの一つとなっています。

まとめ

大正時代から昭和にかけて、能美線の駅として地域の発展に貢献した上開発駅は、昭和55年の路線廃止と共に静かにその姿を消しました。貨物輸送拠点としての顔も持っていたその歴史は、現在はヘルスロードとなった跡地や、隣接する建物の中にわずかに息づいています。多くの人々が行き交ったかつての鉄道駅は、形を変えて地域の生活の中に溶け込んでいます。

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