下ノ江駅

下ノ江駅：狐の伝説と造船の町を繋ぐ歴史の駅

大分県臼杵市田井にあるJR九州日豊本線の下ノ江駅は、1915年（大正4年）に開業した歴史深い駅です。古くから造船業が盛んなこの地域に位置し、静かな佇まいの中に、数々の物語を秘めています。

狐の祟りと鳥越稲荷神社

下ノ江駅の開業後、度重なる事故や災厄に見舞われたという興味深い歴史があります。これらの出来事を、地元住民は狐の祟りだと噂しました。当時の駅長は、別府市の霊媒者に相談。その結果、「駅建設時に狐の巣を破壊したことが原因」との託宣を受け、鳥越稲荷神社を建立して狐を鎮めるべきだと告げられました。

調査の結果、駅建設時に近くの鳥越山を切り崩した際に、狐の巣を破壊していたことが判明しました。工事関係者によって1930年（昭和5年）11月3日、交通安全祈願として鳥越稲荷神社が建立され、それ以降、災厄はなくなったと言われています。この出来事をきっかけに、当時の駅長は無宗教であったにもかかわらず、日蓮宗に入信したという逸話も残っています。

しかし、その後、駅長の交代に伴い例祭がおろそかになった時期に、貨物列車の脱線事故が発生。機関助士が死亡、機関士と車掌が重傷を負うという惨事が起きました。この事故以降、11月3日を例祭日として、代々の駅長が神社の例祭を行うようになったそうです。

駅の構造と周辺環境

下ノ江駅は、島式ホーム1面2線と保線用の側線1本を有する地上駅です。古い木造駅舎を持つ無人駅で、ホームの待合室には券売機が設置されています。

駅周辺は、古くからの造船の町として栄え、川沿いや湾岸沿いには造船所が建ち並んでいます。東へ進むと下ノ江港がありますが、駅からはやや離れた場所に位置しています。下ノ江駅周辺には、下ノ江郵便局、下ノ江造船所、国道217号、大分県道546号下ノ江港線などがあります。

映画のロケ地としての側面

駅の北側にある下ノ江跨線橋（国道217号）は、映画『なごり雪』のロケ地として使用されました。跨線橋から見た佐志生方向の線路は、映画の重要なシーンとして登場しています。

利用状況とアクセス

2015年度の1日平均乗車人員は53人でした。比較的利用者は少ないものの、地元住民の生活に密着した駅として、重要な役割を担っています。静かな佇まいと歴史を感じさせる駅舎、そして、狐の伝説が色濃く残る鳥越稲荷神社は、下ノ江駅の魅力となっています。

参考文献

藤崎一輝『仰天列車』（秀和システム、2006年）
窪田勝則『大分の鉄道』（OAK、1980年）

下ノ江駅は、歴史、文化、そして自然が調和した、魅力あふれる場所です。訪れる際には、静かな雰囲気の中で、歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

もう一度検索