下之郷遺跡

下之郷遺跡の概要と意義

滋賀県守山市に位置する下之郷遺跡は、弥生時代の重要な環濠集落跡であり、2002年に国の史跡に指定されました。その後、2016年には指定範囲が追加され、より多くの遺構が発見されることとなりました。この遺跡は、滋賀県内で最も大きな環濠集落であり、集落が統合されて形成された「クニ」と呼ばれる存在を明らかにする貴重な証拠です。

遺跡の調査歴

1980年、下水道工事における調査で弥生土器の破片や濠の跡が発見され、その後1984年の道路建設工事においては、集落を取り囲む三重の濠跡が確認されました。この濠は幅約5メートル、深さ約1.5メートルの規模を持つもので、1997年の調査では別の6条の濠跡も発掘されました。その中でも内側の濠は幅8メートル、深さ2メートルと、かなりの規模を誇っていました。さらに、2001年の調査で西側にも濠の跡が確認されたことで、遺跡の全体像が徐々に明らかになっています。

村落構造と規模

下之郷遺跡における集落の区域は、東西約330メートル、南北約260メートル、面積は約7万平方メートルに達しますが、外周部を取り囲む6条の濠が示すように、全体の規模はさらに大きく、東西約600メートル、南北約380メートル、面積は約22万平方メートルにも及びます。この広大な規模からも、当時の人々の社会的・経済的な発展をうかがい知ることができます。

集落の遺構と建物

遺跡の中心には、東西75メートル、南北100メートルの溝が掘られ、内側には大型の建物跡が確認されています。この建物は何度も建て替えられ、棟持柱があり、高床式の構造を持つことから、集会や儀式に使用されたと考えられています。特筆すべきは、この遺跡で確認された建物は掘立柱建物や壁建ち建物である一方、竪穴建物跡が見つからなかったことです。

集落の西側には、幅3メートルの土橋状のエリアがあり、ここが集落の出入口だったと推測されています。この地点からは、武器の痕跡も発見されており、当時の人々が外部との接触において何らかの武力抗争を経験していたことが示唆されます。

出土品と発見

この遺跡の特徴として、地下水位が高いために多くの有機物が保存状態良く残されている点が挙げられます。出土品には木製品、植物の種子、動物の遺体が多く含まれています。その中でも、特に稲モミはDNA鑑定の結果、現代の日本では栽培されていない熱帯ジャポニカ種であるとされ、当時の農業状況を考察する重要な材料です。

また、木製の盾やアシ・カズラで編んだ籠も出土しています。これらの盾はスギ材とサカキ材が使われており、その年輪から紀元前223年のものと特定されています。武器も多く出土しており、打製・磨製の石鏃や磨製石剣などが含まれています。中でも中細形銅剣は、日本の遺跡における東限の出土例とされています。

まとめ

下之郷遺跡は、弥生時代の集落の実態を明らかにするための貴重な情報が詰まった遺跡です。その歴史的価値は、国内外の研究者にとっても重要なものであり、今後の研究が期待されます。現在、この遺跡を基に『下之郷史跡公園』が整備されており、訪れる人々が歴史に触れることができる場となっています。

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