下布田遺跡

下布田遺跡：縄文時代の息吹を伝える貴重な史跡

下布田遺跡は、東京都調布市布田に位置する縄文時代晩期の集落遺跡であり、その重要性から国の史跡に指定されています。この遺跡は、都心近郊にありながら良好な環境と地形に恵まれ、縄文時代の文化や人々の生活を知る上で非常に貴重な場所となっています。

遺跡の概要

遺跡は、多摩川中流域の左岸、立川段丘の縁辺から多摩川沖積低地にかけて広がっています。この一帯はかつて雑木林であり、古墳群が存在したという説もあります。地元では「狐塚古墳」と呼ばれていたことから、古墳として認識されていたことが伺えます。

本格的な調査は、1964年から1971年にかけて國學院大學久我山高校考古学部や旧東京都立武蔵野郷土館（現江戸東京たてもの園）などによって行われました。この調査で、土偶、土版、独鈷石、石刀、石剣、石冠などの祭祀に使われたと考えられる遺物とともに、国の重要文化財に指定された滑車型土製耳飾が出土しました。1978年から1982年にかけては、調布市教育委員会が国庫補助事業による範囲確認調査を実施し、方形配石遺構や合口甕棺墓なども発見されています。

これらの調査結果から、下布田遺跡は縄文文化や当時の社会構造を解明する上で重要な遺跡と判断され、1987年5月12日に遺跡南部の約5000平方メートルが国史跡に指定されました。その後も調査は継続され、縄文時代晩期の遺物包含層から、縄文土器や石器類に加えて、骨類、杭状木製品、種実遺体など、多様な遺物が出土しています。これらの成果を受け、2005年3月2日と2011年9月21日には、合計約7000平方メートルの地区が国の史跡に追加指定され、現在の史跡範囲は約13,000平方メートルに及んでいます。

主な遺構と遺物

下布田遺跡からは、当時の人々の生活や文化を知る上で重要な様々な遺構や遺物が出土しています。

特殊遺構

方形配石遺構: 祭祀など特別な目的で使用されたと考えられる遺構。
合口甕棺墓: 甕を棺として使用した墓。
配石埋甕墓: 石を配した中に甕を埋めた墓。

土製耳飾（国の重要文化財）

特に注目されるのは、国の重要文化財に指定されている土製耳飾です。この耳飾は、直径9.8センチメートル、重量75グラムと日本最大級の大きさを誇り、粘土が生乾きの段階で花弁様の文様を肉彫りして整形し、焼成後に樹脂と混交した弁柄を塗布して仕上げた、非常に精巧な作品です。出土品一括ではなく、単体で重要文化財に指定された唯一の耳飾りであり、その文化的価値の高さを示しています。また、群馬県の千網谷戸遺跡からも同じ意匠の土製耳飾が多数出土しており、両遺跡間の交流や文化的なつながりを示唆するものとして注目されています。

その他の遺物

石冠、石刀、石剣：祭祀に使用されたと考えられる石製品。
土版：用途不明の土製の板。

文化財

重要文化財（国指定）
土製耳飾：江戸東京たてもの園に保管されています。
国の史跡
下布田遺跡：1987年5月12日に指定され、その後範囲が追加指定されています。

交通アクセス

京王線 布田駅 徒歩11分
京王線 調布駅 徒歩14分
京王線相模原線 京王多摩川駅 徒歩 20分
小田急バス 地蔵前（バス停） 徒歩6分
小田急バス/京王バス 品川通り上布田（バス停）徒歩5分

関連施設

江戸東京たてもの園：土製耳飾を保管・展示しています。
調布市郷土博物館
調布市郷土博物館分館

下布田遺跡は、縄文時代の文化や社会、そして人々の精神性を知る上で、非常に重要な遺跡です。この遺跡を訪れることで、古代の人々の息吹を感じ、歴史の奥深さに触れることができるでしょう。

参考文献
『下布田遺跡　武蔵野の歴史と考古学』 江戸東京たてもの園（2015/03）

外部リンク
国指定史跡「下布田遺跡」 - YouTube - 調布市民放送局
史跡下布田遺跡 - 調布市

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