下町ボブスレーネットワークプロジェクト

下町ボブスレーネットワークプロジェクトは、東京都大田区の町工場が中心となって、ボブスレーのソリを開発し、その技術力をアピールすることを目的としたプロジェクトです。2011年に始動して以来、多くの企業が参加し、技術を結集して開発に取り組んでいます。

プロジェクトの概要

このプロジェクトの特徴は、大田区の町工場がそれぞれの得意分野を生かし、連携してソリの開発を行っている点です。ソリのフレームは町工場が担当し、カウリング部分は童夢カーボンマジック（現・東レ・カーボンマジック）、空力解析は株式会社ソフトウェアクレイドル、ランナー（そりの刃）の設計・開発は東京大学が手がけるなど、専門性の高い企業や研究機関が協力しています。平成25年度には中小企業庁の「JAPANブランド育成支援事業」にも採択され、その活動が後押しされました。

沿革

2011年: 大田区職員の小杉聡史が、区内の技術力をアピールする手段としてボブスレー製造を提案。株式会社ナイトページャー社長の横田信一郎への提案をきっかけに、9月にプロジェクトが発足しました。初代委員長には株式会社マテリアル社長の細貝淳一が就任し、広報委員長を務めた横田信一郎は、町工場のイメージ向上に尽力しました。
2013年: 安倍晋三首相（当時）が国会の施政方針演説で、下町ボブスレーを「世界に挑んでいる」プロジェクトとして紹介。国際大会での初使用や展示会の開催などを経て、同年6月には下町ボブスレー合同会社が設立されました。当初は2014年ソチオリンピックでの採用を目指しましたが、問題点の多さから不採用となりました。
2014年: 細貝淳一が委員長を退任し、船久保利和が2代目委員長に就任。細貝はゼネラルマネージャーとしてプロジェクトに関わることになりました。
2015年: 平昌オリンピックの日本代表選考テストに参加しましたが、ドイツ製のソリに及ばず不採用。しかし、この結果がきっかけとなり、ジャマイカボブスレー連盟が興味を示し、採用へと繋がりました。
2016年: ジャマイカチームが下町ボブスレーを採用。安倍晋三首相がプロジェクトチームを表敬訪問し、その努力を称えました。
2017年: ジャマイカ女子代表がラトビア製のソリを使用したことで、プロジェクト側との間に軋轢が生じました。資金援助を行っていたにも関わらず、コミュニケーションが困難な状況となりました。
2018年: 平昌オリンピックでジャマイカ代表が下町ボブスレーを使用しないことが決定。プロジェクトは損害賠償請求を行うと発表しました。

ジャマイカ代表チームとの契約トラブル

2016年7月にジャマイカボブスレー・スケルトン連盟と平昌オリンピックでの使用契約を締結しましたが、2017年12月に発生した輸送トラブルを機に、ジャマイカ側がラトビア製のソリを使用したことが問題となりました。性能改善の要求が折り合わず、ジャマイカチームはラトビア製のソリを使い続けました。プロジェクト側は契約不履行として損害賠償請求を表明しましたが、資金回収の困難さや外交上の問題も認識していました。

ソリの制作

プロジェクトでは、ボブスレー経験者の意見を取り入れながら、ソリの軽量化に取り組んできました。バラスト（重り）の設置場所を調整することで、ソリの低重心化、慣性モーメントの低減、前後重量配分の調整を目指しました。軽量化の結果、二世代目の2号機は135kg、三世代目の6号機は161kgという総重量を達成しました。

プロジェクトの制作したソリ

1号機: データ収集を目的とした最初のソリ。童夢・カーボンマジックが全体設計を担当し、脇田寿雄の協力を得て開発されました。レギュレーションを一部無視した設計で、試験滑走や全日本ボブスレー選手権で使用されました。
2号機: ソチオリンピックを目指して開発された機体。東レ・カーボンマジックが全体設計を担当し、軽量化と強度の維持を両立させました。海外でのテストを経て、改良が加えられました。

組織概要

プロジェクトは、下町ボブスレー合同会社、公益財団法人大田区産業振興協会、大田区、協力企業によって構成されています。寄付金や協賛金の総額とその使途は公表されていませんが、大田区はプロジェクトの公益性を認めています。

主要メンバー

細貝純一（下町ボブスレープロジェクトゼネラルマネージャー / 株式会社マテリアル代表取締役）
* 國廣愛彦（下町ボブスレープロジェクト推進委員長 / 株式会社フルハートジャパン代表取締役）

組織の特徴

地域の中小企業が連携し、大企業や研究機関の協力を得ながら、世界に挑戦するプロジェクトです。技術力の向上だけでなく、地域経済の活性化や中小企業のイメージアップにも貢献しています。しかし、会計情報の公開やスポンサーとの関係など、課題も残されています。

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多くの企業がスポンサーとしてプロジェクトを支援しています。

情報発信

平昌五輪を揶揄するようなツイートや応援幕の寄せ書きなど、不適切な情報発信が問題視されました。プロジェクト側はこれらの問題に対して謝罪し、管理体制の不備を認めました。

コラボレーション

スカイマークとのコラボレーションによる「下町ボブスレージェット」の運航や、大田区のご当地ナンバープレートのデザイン採用など、様々な形で地域との連携を深めています。

歴史

戦後初の日本製ボブスレーは、札幌市の町工場が手掛けた「MISHIMA-I・2men」でした。その後、長野オリンピックに向けて国産ソリを製作する計画が立ち上がりましたが、資金難で中止となりました。下町ボブスレーネットワークプロジェクトは、これらの開発史を知らず、「初の国産ボブスレー」を標榜していました。

プロジェクトの立ち上げ

2010年、大田区職員の小杉聡史が、町工場の技術をアピールするための手段としてボブスレー開発を提案。多くの協力者を得て、2011年にプロジェクトが発足しました。

同様のプロジェクト

大田区の町工場が連携して取り組むプロジェクトとして、nbike の開発やパラリンピック用車いすの開発などがあります。

まとめ

下町ボブスレーネットワークプロジェクトは、大田区の町工場が技術を結集し、ボブスレー開発を通じて地域経済の活性化と技術力の向上を目指す試みです。国際大会への挑戦やジャマイカ代表との交流を通じて、中小企業の技術力を国内外にアピールしました。しかし、契約トラブルや情報発信の問題など、課題も残されています。今後のプロジェクトの発展に期待が寄せられています。

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