下谷二三子

下谷 二三子（したや ふみこ）

下谷二三子（本名：池松 二三子）は、昭和から平成にかけて日本の歌謡界で大きな足跡を残した民謡・演歌歌手です。1938年6月21日に山形県鶴岡市に生まれ、2023年2月21日に84歳で逝去しました。キングレコードに所属し、その長いキャリアの中で様々なジャンルの歌を歌い継ぎました。

生い立ちと音楽への道

下谷は、幼少期から音楽に恵まれた環境で育ちました。母親の青山ちどりはテイチク所属の民謡歌手であり、父親は興行師という背景がありました。このような家庭環境のもと、彼女は10歳頃から母親から直接民謡の手ほどきを受け、15歳になる頃には日本の伝統的な楽器である三味線も習い始め、音楽の基礎を固めました。

キャリアの始まりと師事

1958年、さらなる飛躍を目指して東京へ上京。翌1959年10月には、キングレコードより「ゴルフ拳」で念願の歌手デビューを果たしました。デビューと同年の1959年には、日本の歌謡史における巨星、三橋美智也の日劇リサイタルに出演するなど、早くからその実力を認められました。その後、三味線の技術を高めるために藤本琇丈に師事し、また歌謡曲の表現については吉田矢健治から指導を受けるなど、専門家からの教えを請い、芸の幅を広げていきました。

幅広い活動と得意分野

デビュー以来、下谷二三子は民謡、歌謡曲、俗曲といった日本の大衆音楽の広い分野で精力的に活動を展開しました。特に、日本の伝統的な歌唱法や情感を大切にする「日本調」を得意とし、その個性的な歌声と表現力で多くの聴衆を魅了しました。

代表的な功績とヒット

彼女のキャリアにおける最大のヒット曲の一つとして挙げられるのが、1977年に発売された「博多さのさ」です。この楽曲は、当時盛んだった舞踊ブームと相まって大きな人気を博し、実に40万枚を超える大ヒットを記録しました。この曲は現在に至るまで長く歌い継がれるロングセラーとなっています。また、戦後復興期における日本の民謡界を代表する売れっ子歌手として、その地位を確立しました。特に、同じキングレコードに所属していた三橋美智也や春日八郎といった同時代の人気歌手との共演作品は数多く、これらの共演は当時の歌謡界に大きな影響を与えました。

歌手としての背景と芸名

下谷は芸者歌手出身という経歴を持っています。歌手活動の初期には「小桜二三子」という芸名を使用していましたが、東京都下谷に居住していたことが縁となり、現在の「下谷 二三子」へと改名したと伝えられています。

特筆すべきエピソード

1963年には、三橋美智也とのデュエットで「東村山音頭」を発表しました。この楽曲は、後に国民的人気コメディアンであるザ・ドリフターズの志村けん氏が、そのギャグとして歌詞の一部を改変して歌ったことで、本来の民謡・歌謡曲ファンだけでなく、より広い世代にその存在が知られることとなり、意外な形で知名度が飛躍的に高まるというエピソードがあります。

主な作品

下谷二三子の代表的な楽曲には、様々なジャンルのものが含まれます。

歌謡曲:
博多さのさ
花の彰義隊
嵯峨野ひしぐれ 他
民謡:
磯原節
シャンシャン馬道中唄
淡海節 他

メディア出演

テレビ番組にも多数出演し、その歌声を全国に届けました。

NHK「それいけ!民謡うた祭り」
テレビ東京「木曜8時のコンサート〜名曲!にっぽんの歌〜」
* 「日本歌手協会歌謡祭・歌の祭典」など

晩年

2023年2月21日、急性大動脈解離のため、埼玉県川越市内の病院で逝去しました。享年84歳でした。長年にわたり、日本の伝統的な歌謡文化の継承と発展に貢献し、多くの人々に親しまれたその歌声は、これからも多くの人々の心に響き続けるでしょう。

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