下館SPICA

下館SPICA（しもだてスピカ）は、茨城県筑西市丙360番地に位置する重要な複合ビルです。この建物は、地上6階、地下1階の構造を持ち、JR下館駅の北口正面、ロータリーを挟んですぐという利便性の高い立地にあります。かつては都市型のショッピングセンターとして多くの人々に利用されていましたが、時代の変遷を経て、2017年（平成29年）2月からはその主要部分が筑西市役所の本庁舎として機能しています。隣接地には6階建ての立体駐車場が設けられており、2本の連絡通路でビル本体と繋がっているため、利用者にとってアクセスしやすい環境が整備されています。この駐車場は市が管理しており、市役所利用者だけでなく一般市民も24時間利用可能で、一定時間は無料で提供されています。駐車場の1階部分には、筑西警察署下館駅前交番も設置されています。

歴史

下館SPICAの建設地は、ビルが建てられる以前は駅前の商店街として、スーパーマーケットや個人商店、医院などが集積していました。このビルは、駅前地域の活性化を目指す行政主導の市街地再開発事業の一環として計画され、「下館中央ショッピングデパートスピカ」という名称で1991年（平成3年）5月に開業しました。当初は下館サティを中核テナントとして、都市型の商業施設としてスタートを切りました。

しかし、開業当初に計画されていた駅との歩道橋による直結が地元商業者の反対で見送られたことや、中心市街地の地位低下といった要因が重なり、商業施設としての業績は期待されたほど振るいませんでした。さらに、運営会社であるマイカルの経営破綻の影響もあり、核店舗だった下館サティは2002年（平成14年）8月末に惜しまれつつ閉店しました。

サティ閉店後、ビル内に風俗店が進出する計画が持ち上がったため、筑西市は事態を憂慮し、マイカルが所有していたビルの床面積を購入しました。国の補助金も活用し、ビル再生に向けた取り組みが進められました。そして、2003年（平成15年）7月には、新たな中核テナントとしてエコスや長崎屋を迎え、「下館スピカ」として再開業を果たしました。しかし、この再出発後も道のりは平坦ではなく、書店や衣料品店がわずか1年で閉店するなど苦戦が続きました。特に食品関連の核店舗は定着せず、2006年（平成18年）1月にエコスが、その後に出店したサントマト（2007年4月撤退）、エイム（2008年5月末撤退）といったスーパーマーケットが短期間で次々と撤退しました。

こうした商業施設としての度重なる失敗と空きフロアの増加は、ビルの維持管理費が筑西市の財政に重い負担としてのしかかる事態を招きました。年間約7,000万円に及ぶ維持費は、ビルの売却検討が議会で提案されるほどの深刻な問題となりました。しかし、売却先の選定や利用方針に関する懸念から、売却案は議会で否決され、ビルの活用問題は混迷を極めました。最盛期には約40店舗あったテナントも、2009年（平成21年）4月にはわずか12店舗にまで減少していました。

転機が訪れたのは、2011年（平成23年）3月の東日本大震災でした。当時の市役所本庁舎は大きな被害こそ免れたものの、築年数が古く現行の耐震基準を満たしていないことから、大規模な改修か移転が避けられない状況となりました。この代替案として、下館SPICAビルを改修して本庁舎を移転させる案が有力視されるようになります。一度は売却先も決定しましたが、その利用方針に対する懸念から再び市議会によって売却処分が否決されました。市役所移転問題と絡み合ったスピカビルの活用問題は、しばらくの間、市民の間でも意見が分かれる状況が続きました。

最終的に、2014年（平成26年）に筑西市は地元の意見も反映させた「スピカビル活用プラン」案を策定・公表しました。この計画では、ビルの大部分を市役所の本庁舎として利用しつつ、一部に商業スペースや市民が交流できる多目的スペースを設けるという方針が示されました。これにより、長らく懸案となっていたスピカビルの活用問題は解決へと向かいました。2015年（平成27年）9月から2017年（平成29年）1月にかけて大規模な改修工事が行われ、2017年1月より市役所各部署の移転が順次開始されました。そして、同年2月13日までに業務が開始され、「スピカ分庁舎」は晴れて「筑西市役所本庁舎」としての新たな役割を担うことになりました。一方、旧本庁舎は「下館庁舎」と名を改め一部部署が残りましたが、最終的に全ての機能が移転し、2023年（令和5年）3月までに建物の解体が完了しています。

現在の施設構成

2024年現在、下館SPICAは筑西市役所本庁舎が中心機能を担っています。

地下1階 - 4階: 筑西市役所本庁舎の主要部門が配置されています。地下1階には多目的スペースやキッズコーナーなど、市民が利用しやすい施設も設けられています。1階には、起業家を支援するための期間限定レンタルスペース「チャレンジショップ」や、市民の憩いの場となる広場、そして利便性の高いヤマザキYショップ下館スピカ店があります。
5階: 市役所機能以外の業務・サービス系テナントが集まっています。茨城新聞社の筑西支社、パソコン教室のJOYパソコンスクール下館校、地域の情報を伝えるケーブルテレビ筑西、保険代理店の保険ビルド茨城支店などが入居しています。かつて存在した屋内プールやスポーツジムは、2020年に閉鎖されています。
* 6階: 公共性の高い施設が集まっています。筑西市議会の議場、地域経済を支える下館商工会議所、法律関連の手続きを行う下館公証役場、最大240席の多目的ホールであるコミュニティプラザなどがあります。また、ビルの維持管理やテナント貸し出し、Yショップ経営を行うスピカ・アセット・マネジメント株式会社もこのフロアにあります。同社の社長は筑西市長が務めています。

アクセス

下館SPICAは、JR、関東鉄道、真岡鐵道の下館駅北口から徒歩約2分と非常にアクセスしやすい場所にあります。最寄りのバス停は、筑西市バスの「下館駅北口」です。

商業施設としての役割を終え、現在は公共施設を核とした複合ビルとして生まれ変わった下館SPICAは、筑西市の行政、経済、市民生活の中心的な拠点として、その役割を果たし続けています。

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