不動

不動（ふどう）とは

「不動」は、日本の伝統的な舞台芸術である歌舞伎の中でも特に有名な演目の一つで、歌舞伎十八番に分類されます。その起源は、元禄10年（1697年）にまで遡ります。この年、江戸の中村座で初代市川九蔵（二代目市川團十郎）が『兵根元曾我』という作品の一幕で演じたことが、その原型となりました。この演目の大詰めでは、役者が不動明王という存在に変身し、観客に強い印象を与えるシーンが展開されます。この設定は、市川宗家が持つ成田山信仰に由来しており、宗教的な要素が強いことでも知られています。

現存する「不動」の形は、寛保2年（1742年）に、大坂の佐渡嶋座で二代目市川海老蔵（二代目市川團十郎）が『雷神不動北山桜』の五幕目の大切りに組み込んだことが初演とされています。このように、時代を経て変化を遂げながらも、その伝統は受け継がれています。また、昭和42年（1967年）には、二代目尾上松緑が戸部銀作の脚本により「不動」の復活上演を行い、現代においてもその魅力を伝えています。

興味深いことに、『雷神不動北山桜』にはさらに三幕目に『毛抜』、四幕目に『鳴神』という、共に歌舞伎十八番に属する演目が含まれています。これらの演目はそれぞれが独自の物語を持ち、歌舞伎の豊かな世界を広げる要素となっています。

さらに、十二代目市川團十郎が平成4年（1992年）に復活上演した『成田山分身不動』も存在しますが、こちらは原型とは異なるため「歌舞伎十八番之内」とは認められていません。異なるアプローチを用いたこの演目は、歌舞伎の多様性を示す一例となっています。

「不動」は、伝統だけでなく、その独自のストーリーや演出によって、今もなお観客を魅了し続ける演目であることが、その人気の理由と言えるでしょう。特に信仰や宗教的なテーマが根底にあることが、より一層の深みを与えています。

そのため、歌舞伎に興味を持つ人々はもちろん、他の日本の伝統文化に触れたいと思っている人々にもこの演目はおすすめです。ぜひ生の舞台でその迫力を体感してみてください。

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