与勇輝

与勇輝（あたえ ゆうき）は、1937年9月17日生まれ、神奈川県川崎市出身の日本の人形作家です。両親は奄美群島の与路島の出身です。

作風

与勇輝の人形創作は、着物や洋服の襞の表現に強いこだわりを持ち、主に木綿の古布を使用しています。人形の持ち物や付属品に至るまで、すべて本人の手作りである点が特徴です。その作風は、日本の原風景を思い起こさせるような、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しており、表情豊かで柔らかみのある表現が、観る人の心を捉えます。特に、黒柳徹子の人気番組「徹子の部屋」のセットで使われている妖精の人形は、広く知られています。

経歴

1963年、日本デザインスクールを卒業後、1965年にマネキン会社に勤務しながら、独学で人形創作を始めました。1968年には人形作家の曽山武彦に師事し、技術を磨きました。

1970年、川本喜八郎、辻村寿三郎など他の人形作家たちと共に「第３回グループ・グラッブ展」に参加し、その後も数回参加しています。1971年には、飯沢匡監督、土方重己デザインによる人形絵本「シンデレラ」と「ピノキオ」の人形制作を担当しました。

1991年には、パリ装飾芸術美術館の「世界の人形・今昔展」に招待出品され、国際的な評価を得ます。1993年には、山梨県河口湖町に河口湖ミューズ館・与勇輝館が開館し、作品を常設展示しています。1994年には、倉本聰との共著『フォトストーリー　ニングル』を出版し、1995年には河口湖町から特別町民称号を授与されました。

1998年には、NHK朝の連続テレビ小説『天うらら』で人形制作指導を担当し、1999年には東映映画『鉄道員』のために人形作品「雪子」を制作しました。

2000年には、ニューヨークで初の海外個展「The World of YUKI ATAE」を開催し、2006年にはパリのバカラ美術館で個展「EXPOSITION ATAE YUKI」を開催しました。この個展を記念し、「パリ・バカラ美術館開催記念展　与勇輝　人形芸術の世界」が国内23会場で巡回展として開催されました（2008年まで）。

2008年には、サンパウロで開催された「郷愁の日本　与勇輝人形展」が、ブラジル移民100周年記念公式事業（外務省主催）として参加し、10日間で20万人を動員しました。また、この年に卓越した技能者（現代の名工）を受章し、川崎市文化賞を受賞しました。2010年から2013年にかけては、「昭和・メモリアル　与勇輝展」が国内を巡回しました。

2018年には、パリ日本文化会館で「与勇輝展　布の彫刻-日本の情景」を開催し、帰国後には「パリ凱旋・傘寿記念　与勇輝展　創作人形の軌跡」が国内を巡回しました。同年、神奈川文化賞を受賞しました。2023年には地域文化功労者表彰を受けています。

その他

与勇輝の作品は、その繊細な手仕事と温かみのある表現から、多くの人々を魅了し続けています。古布の持つ独特の風合いと、人形たちの豊かな表情は、観る人の心を深く捉え、忘れられない印象を与えます。国内外での個展や展示会、メディアへの露出などを通して、与勇輝の創作人形は、ますます多くの人々に愛され続けています。

脚注

外部リンク

* 河口湖ミューズ館 - 与 勇輝 館 -（作品常設展示）

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