与島沖旅客船沈没事故

与島沖旅客船沈没事故の概要

2020年11月19日、瀬戸内海の与島沖で小型旅客船「Shrimp of Art」が沈没する事故が発生しました。この船には、坂出市立川津小学校の修学旅行中の児童や教員ら62名が乗船していました。幸いにも全員が救助されましたが、数名が低体温症などで病院に搬送される事態となりました。この事故は、航行中の安全管理の重要性を改めて認識させる出来事となりました。

事故の経緯

修学旅行の変更と出航
川津小学校の6年生は、新型コロナウイルス感染症の影響で、例年の神戸、京都、奈良への修学旅行を、香川県内への旅行に変更しました。11月18日から1泊2日の日程で県内を巡り、19日の午後は瀬戸内海クルージングを楽しむ予定でした。午後2時50分頃、一行は「Shrimp of Art」に乗船し、坂出港を目指して出航しました。

事故発生
旅客船は与島・羽佐島の北側海域を航行中、岩礁に接触したとみられる衝撃を受け、船体に浸水が始まりました。午後4時40分頃、船長が「漂流物に衝突して船が浸水している」と118番通報を行いました。乗組員は乗客に救命胴衣の着用を指示しましたが、直後に海水が客室に侵入したため、乗客はデッキへ移動し、さらに校長は児童を屋根の上に避難させました。その後、船長の指示で乗客は海に飛び込み、一部は船上に残りました。

救助活動
事故発生後、近くの漁船が駆けつけ、海に漂う乗客の救助活動を開始しました。漁船や貨物船が照明を照らしながら救助活動を続け、海上保安部も到着し、約1時間後には全員が救助されました。救助を待つ間、パニックになる児童もいましたが、児童同士で励まし合ったそうです。救助された62名のうち、児童2名とバスガイド1名が低体温症などを訴え病院に搬送されましたが、いずれも軽症でした。なお、旅客船は通報から約20分後に沈没しました。

事故原因と捜査

実況見分と船長逮捕
事故翌日の11月20日、高松海上保安部が実況見分を行い、沈没した船体は小与島沖の海底で発見されました。潜水調査の結果、現場近くの岩場に旅客船の塗料と同一のものと思われる塗料が付着していることが判明しました。同日、高松海上保安部は、安全確認を怠り浅瀬に乗り上げたとして、船長を業務上過失往来危険の疑いで逮捕しました。また、船の運航会社である高松海上タクシーも捜索されました。

運輸安全委員会の調査
11月21日には、運輸安全委員会が調査官を派遣し、事故原因の調査を開始しました。2021年3月18日、高松簡易裁判所は、業務上過失往来危険と業務上過失傷害の罪で略式起訴された元船長に対し、罰金40万円の略式命令を下しました。さらに、2023年3月15日、海難審判所は、事故現場付近の調査を怠った過失があるとして、元船長に業務停止1か月の裁決を言い渡しました。

事故の教訓

この事故は、瀬戸内海のような複雑な海域での航行において、事前の入念な安全確認と航行中の注意が不可欠であることを示しました。また、緊急時における乗組員の的確な指示と乗客の冷静な行動が、全員救助という結果に繋がったと言えるでしょう。この事故を教訓に、今後の海上輸送における安全対策がより一層強化されることが望まれます。

関連情報

• - 海難事故の一覧
• - 水上タクシー（海上タクシー）
• - 運輸安全委員会の船舶事故調査報告書

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