世界のウチナーンチュ大会

世界のウチナーンチュ大会は、沖縄県が主体となり、概ね5年の間隔で開催され続けている国際的なイベントです。世界各地に暮らす沖縄にルーツを持つ人々、通称「ウチナーンチュ」を沖縄本島へ招き、交流を深めることを目的としています。1990年に第一回が開催されて以来、沖縄と世界のウチナーンチュを結びつける強固なネットワークを築き上げる重要な機会となっています。

大会のプログラム

大会は通常、4日間にわたって開催され、非常に多岐にわたる内容が用意されています。現代の沖縄音楽や舞台芸術、琉球舞踊やエイサーといった伝統芸能の披露はもちろんのこと、海外の沖縄県系人社会や、沖縄と海外の関係性に関する学術的な議論を行うシンポジウムも開催されます。また、世界各地のウチナーンチュが暮らす地域の特産品を紹介する物産展なども催されます。沖縄本島だけでなく、県内の各市町村においても、地域住民と海外からの参加者との交流プログラムが企画され、大会を盛り上げます。例えば、2016年に開催された第6回大会では、夏川りみさんやBEGINといった、国内外で活躍する沖縄出身のミュージシャンたちが開閉会式を彩りました。

開催の背景

この大会が生まれた背景には、沖縄の特殊な歴史があります。沖縄は古くから移民県としての側面を持ち、1900年前後からはハワイやアメリカ本土、ブラジル、ペルーなど、世界各地への本格的な移住が始まりました。太平洋戦争後、沖縄がアメリカ合衆国の統治下にあった時代においても、戦後の引き揚げによる人口増加と、米軍基地建設に伴う農地の減少という課題を抱え、海外への移住は引き続き奨励されました。琉球政府主導の移民政策としてボリビアへの集団移民（オキナワ移住地）が行われたほか、ブラジルなどへの移住も積極的に進められました。現在、海外へ移住した沖縄県出身者とその子孫は、推定約40万人にも上ると言われています。

このような沖縄の移民の歴史に光を当てたのが、琉球新報で1984年から2年間にわたり連載されたルポルタージュ企画『世界のウチナーンチュ』でした。全484回に及んだこの連載は、海外で新たな生活を築いた沖縄出身者たちの生き様を克明に描き、大きな反響を呼びました。連載記事は単行本として3巻にまとめて刊行され、学校の授業や様々な団体の学習会などで広く活用されることになります。この連載に深い感銘を受けた当時の沖縄テレビのアナウンサーは、世界各地のウチナーンチュを取材するテレビ番組の企画を立ち上げ、ドキュメンタリー番組『世界ウチナーンチュ紀行』へとつながり、世界に暮らすウチナーンチュへの理解を深め、広く伝える取り組みにつながりました。

また、行政側の動きも開催の重要な契機となりました。1972年に本土復帰を果たした沖縄でしたが、その後も米軍基地問題や経済・産業の停滞といった課題に直面していました。こうした状況の中で、沖縄自身のアイデンティティを再確認し、模索する機運が高まります。歴史的に見れば、琉球王国はかつてアジアの海を股にかけた交易国として栄えていた時代があり、首里城正殿にかけられた「万国津梁の鐘」は、まさにその精神を象徴する存在です。琉球新報の連載は、当時沖縄県知事であった西銘順治氏の注目を集めました。西銘氏は1990年に「世界ウチナーンチュ・ネットワーク構想」を提唱。この構想に基づき、海外の沖縄県出身者たちとの関係構築のための大規模な交流イベントが検討が進められ、同年、記念すべき第一回世界のウチナーンチュ大会の開催へとつながったのです。

大会の影響

第一回大会が開催された後、その影響は経済分野にも波及しました。特にハワイの沖縄系実業家たちの間で、沖縄県との経済交流を求める声が高まりを見せ、「ハワイ・ウチナーンチュ・ビジネス・グループ（HUB）」という組織が結成されました。HUBは1995年の第2回大会において「ハワイ物産展」を実施するなど、具体的な経済交流の取り組みを始めました。世界のウチナーンチュ大会は、単なる文化交流に留まらず、経済や社会的な連携をも促進する役割を果たしており、世界中のウチナーンチュが沖縄への思いを共有し、新たな絆を育む場として、その意義を高め続けています。

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