中井検裕

中井 検裕（なかい のりひろ）

1958年、大阪府に生まれる。日本の都市研究者であり、東京工業大学名誉教授。専門は都市計画および都市景観の研究。

略歴

中井検裕は、東京工業大学工学部社会工学科で学び、1980年に卒業。同大学大学院理工学研究科社会工学専攻に進み、1982年に修士課程を修了した。その後、英国へ渡り、ケンブリッジ大学土地経済学大学院で土地経済学修士課程を修めている。1986年には東京工業大学大学院社会工学専攻の博士課程を単位取得満期退学。

研究活動を本格化させるため、再び渡英し、ロンドン大学・スクール・オブ・エコノミクス地理学科の研究助手として活動した。帰国後、1988年に東京大学教養学部社会科学科助手となる。1992年、明海大学不動産学部に助教授として着任。1994年には母校である東京工業大学工学部へ助教授として転じ、1996年から東京工業大学大学院社会理工学研究科助教授を務めた。2002年に同大学院の教授に昇任し、長年にわたり都市計画分野の教育・研究をリードした。2023年に東京工業大学名誉教授の称号を受け、引き続き東京工業大学キャンパスマネジメント本部特命教授としても活動している。石原舜介に師事。

研究と教育

中井氏の研究は、都市計画と都市景観を二つの柱としている。特に、美しい都市景観の形成や、持続可能な都市の発展に向けた計画手法に関心を寄せ、精力的に研究活動に取り組んできた。1994年3月には、東京工業大学より工学博士の学位を取得。東京工業大学では、教壇に立ち多くの後進を育成し、都市計画分野の発展に貢献した。

学協会および公的な活動

学術的な活動に加え、中井氏は国内外の様々な学協会や公的機関で要職を歴任し、その専門知識を社会に還元している。

特に日本都市計画学会においては、2000年から2006年にかけて評議員を務めた後、理事（2006年-2016年）、副会長（2012年-2014年）、会長（2014年-2016年）と主要な役職を歴任し、学会活動を牽引した。また、都市住宅学会では理事を務め（2002年-2012年）、International Federation for Housing and Planning (IFHP) のCouncil memberとしても活動している。

国や地方公共団体の政策形成にも深く関与しており、国土交通省の社会資本整備審議会委員、交通政策審議会臨時委員、国土審議会特別委員、国立研究開発法人審議会臨時委員、大都市戦略検討委員会委員などを務めた。内閣府の都市再生の推進に係る有識者ボード委員や、農林水産省の農地転用に関する検討会委員など、多岐にわたる分野で専門的な見地を提供している。

地方自治体においては、東京都景観審議会会長や東京都国土利用審議会会長を務めたほか、武蔵野市、戸田市、目黒区、町田市、三鷹市、杉並区、青梅市、港区、府中市、川崎市、各務原市、さいたま市など、数多くの都市計画審議会やまちづくり関連委員会の委員、会長を務めている。東日本大震災後の復興にも尽力し、陸前高田市の復興計画検討委員会委員長および復興計画推進委員会委員長を務め、被災地のまちづくりを支援した。一般社団法人大都市政策研究機構理事、日本不動産学会理事、旭硝子財団理事なども務めている。

主要著作

共著や編著として、都市計画や景観に関する多数の書籍を刊行している。

『都市の風景計画』（共著、学芸出版社）
『都市計画の挑戦』（共著、学芸出版社）
『安全と再生の都市づくり』（共著、学芸出版社）
『景観まちづくり』（編著、丸善）
『景観法活用ガイド』（編著、ぎょうせい）
『復興・陸前高田 : ゼロからのまちづくり』（共編著、鹿島出版会）

その他にも、『現代イギリス地方自治の展開』、『協議型のまちづくり』、『英国都市計画とマスタープラン』、『都市美』などの著書がある。

受賞

長年の研究活動や著作に対し、以下の賞が贈られている。

1995年：日本都市計画学会論文奨励賞
2003年：都市住宅学会論文賞
2023年：日本建築学会著作賞
2023年：土木学会賞（出版文化賞）

中井検裕は、都市研究者として学術領域を深めると同時に、教育者として後進を育て、さらに数多くの公的な活動を通じて都市計画や景観政策の実践に貢献してきた、日本の都市分野における重要な人物である。

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