中京商対明石中延長25回

中京商業対明石中学校延長25回：高校野球史に残る激闘

1933年8月19日、第19回全国中等学校優勝野球大会準決勝。中京商業学校（現・中京大学附属中京高等学校）と兵庫県立明石中学校（現・兵庫県立明石高等学校）による一戦は、延長25回にも及ぶ死闘を繰り広げ、高校野球史上最長記録として名高い試合となりました。この記録は、1958年の延長18回引き分け再試合規定制定により不滅のものとされてきましたが、2018年のタイブレーク制度導入により更新の可能性が復活しました。

試合前：両校の状況と因縁

中京商は史上初の3連覇を目指していました。エース吉田正男を中心に、堅実なチームワークを誇っていました。一方、明石中は剛腕投手楠本保を擁し、前年の選抜大会で中京商を1-0で完封勝利しており、中京商にとって大きな壁として立ちはだかっていました。しかし、楠本は体調不良により、本大会では中田との継投が中心となっていました。

中京商は綿密な準備で試合に臨みました。昼食はカツカレーでスタミナをつけ、試合中もレモンでエネルギー補給するなど、合理的な戦略を採っていました。一方、明石中は重湯と卵のみというシンプルな食事でした。

先発投手は、中京商が吉田、明石中が中田でした。中田の先発は中京商にとって予想外であり、それまでの「打倒楠本」戦略を狂わせる要因となりました。しかし明石中側は、楠本の体調不良と中田の好調さを考慮した上での決断でした。

試合経過：息詰まる投手戦と歴史的瞬間

試合は両投手の好投により、9回まで0-0の投手戦が続きました。9回裏、中京商は好機を迎えるも併殺に倒れ、延長戦へ突入。15回頃からは観衆も静まり返るほどの緊迫した展開となりました。

21回以降も両チームは互いに譲らず、点の入らないまま試合は進みます。そしてついに迎えた25回裏、中京商は四球と犠打で無死満塁のチャンスを作ります。1番打者大野木の打球は二ゴロ。しかし、明石中の二塁手嘉藤の送球ミスにより、サヨナラ勝ちを収めました。試合時間4時間55分、投球数は吉田336球、中田247球という両者完投の死闘でした。

試合後：余波とその後

スコアボードは16回までしかなく、17回以降は球場職員が臨機応変に対応しました。試合途中、大会本部は選手の健康を考慮し試合中断を提案しましたが、両校は拒否。結局、25回で打ち切られることが決まりましたが、中京商の選手は最後までその事実を知らされていませんでした。

NHKラジオの中継では、アナウンサー高野国本氏が1人で全イニングを担当。途中の交代要請を拒否し、選手と共に歴史的瞬間を伝えました。

試合後、選手たちは疲労困憊でありながらも、勝利・敗北の実感が薄いことを語っています。中京商の堅実な守備が勝因の一つであったと証言されています。

翌日の決勝で中京商は優勝、史上初の3連覇を達成しました。同年の明治神宮野球大会決勝でも両校は対戦し、中京商が勝利しました。しかし、この試合に出場した両校の選手8名は後に戦死しました。

この試合は、選手たちの努力、戦略、そして運命が複雑に絡み合った歴史的ドラマとして、今も語り継がれています。

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