中右記

中右記について

『中右記』（ちゅうゆうき）は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての重要な日記で、著者は藤原宗忠です。彼は寛治元年（1087年）から保延4年（1138年）までの期間にわたり、主に自らの日常生活や政治に関する出来事を書き留めました。その記録は、歴史学や文献での取扱いにおいて極めて貴重な資料とされています。実際、この日記は院政が始まった初期の状況を理解するための基本的な史料となっています。

日記の背景と特徴

藤原宗忠は、日記を『愚林』と名付けたと伝えられていますが、一般には「中御門右大臣の日記」という意味で「中右記」と呼ばれるようになりました。この作品は、彼が26歳の元旦からスタートし、最初の数年間（特に寛治3年の部分）は本人によるものであり、以降の年については息子の宗能によって編集されたとされています。これにより、内容は簡略化され、特に寛治3年の記録が弱冠に短くなっているのが特徴です。

日記を写すにあたり、元の記録は破棄されたため、現存するものには一部の欠落が見られますが、50年以上の長きにわたって、当時の政治的重要事項が詳細に記録されています。この文書の大きな特徴の一つは、人々の死亡記録に対して、六国史の略伝を付け加えた点です。これにより、日記は単なる個人的な記録を越え、歴史上の意義を持つこととなりました。

災害の記録

『中右記』には、様々な災害に関する記録も存在します。これにより、当時の災害の規模や被害についても考察するための根拠となっているのです。1096年には永長地震による京都市内の被害が記述され、1106年には疫病の流行が記録されました。また、1108年には浅間山の噴火についても言及され、忠長から聞いた話として記録されています。

出版とアクセス

『中右記』は、東京大学史料編纂所などによって編纂され、数回にわたって出版されています。特に1993年から2014年にかけて、岩波書店より全18巻の形で刊行されたもので、多くの研究者に利用されています。また、陽明叢書や史料大成といった他の資料集にも収められており、貴重な参考文献となっています。

参考文献

この日記に関しては、様々な研究が行われています。中でも矢野太郎の解題や、松薗斉による研究などは、『中右記』を理解する上で欠かせません。特に、宗忠の見た院政の状況や、それに伴う貴族社会の動向に関する研究は、今後の日本中世史の研究においても重要な位置を占めることになるでしょう。

以上が、藤原宗忠によって著された『中右記』の概要とその意義についての解説です。

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