中和院

中和院について

中和院（ちゅうかいんまたはちゅうわいん）、あるいは中院（ちゅういん）は、平安京の大内裏、すなわち平安宮の南西部に位置する歴史的な神殿です。現在の京都市上京区千本通下立売下ル付近にあたります。この場所は、天皇が新嘗祭や神今食の祭事を行うための重要な施設として機能していました。

概要

中和院は平安宮創建時に設立されたと考えられており、文献では「中和院」と「中院」の両表記が見られ、時には「神今食院」や「斎院」という名称も使用されました。院の周囲は築垣で囲まれ、内部には神嘉殿（しんかでん）や東舎、西舎、北殿といった建物が配置されていました。これらの建物は回廊や渡廊で結ばれ、神嘉殿の中央部分には天皇が祭事を行うための神座が設置されていました。

新嘗祭および神今食の際、天照大神と天皇がともに食を共にする重要な儀式が行われており、これが古代から続く皇室の祭祀の一環となっています。現在の皇居内においても類似の祭事が行われており、平安時代以来の伝統が受け継がれています。

中和院は、皇室の祭事を内裏から切り離して行うために設けられ、常設の神殿としての役割を果たしました。これは平安宮の構造において、特異的な位置を持ち、天皇の宮殿と太上天皇の宮殿が対称的に配置されることで、歴史的意義が強調されます。

歴史

中和院に関する最初の文献は『日本後紀』の延暦23年（804年）の記述であり、この時点で中院の西楼が倒壊したことが報告されています。これにより、中和院は創設当初から存在していたと考えられます。「中」とは、平安宮の中心に位置することから来ているという説や、神事に由来するともされています。

また、天長8年（831年）の『類聚国史』では「中和院」という名称が確認され、「中和院」と「中院」という表現が混在して使用されていたことが伺えます。特に961年の内裏火災の後に「中和院」という名称が一般的になったという説もあります。

中和院は、いくつかの火災に見舞われ、その都度、再建が行われました。特に康平元年（1058年）には、中和院を含む一帯が焼失し、その影響は大きなものでした。この再建作業は複雑で、歴史的な意義を考慮しつつ行われたと考えられています。

中和院の構造

中和院は四方を築垣に囲まれており、正殿である神嘉殿といった建物が設計されています。神嘉殿は東西方向に延び、桁行7間、梁行2間の広さを誇り、周囲には廂が巡らされていました。内部には中央に神座が設置され、天皇の御座や内侍の待機場所も存在しました。

近年の考古調査では、中和院の基礎や構造について新たな知見が得られています。特に神嘉殿に関する調査が進んでおり、建物の大きさやデザインが検出されています。これにより、平安時代の祭祀施設としての重要性が再確認されています。

中和院は、古代日本の皇室にとって重要な神聖な空間であり、今なお多くの歴史的、文化的価値を提供しています。

もう一度検索