中国におけるコーヒー生産

中国におけるコーヒー栽培の歴史と現状

中国でのコーヒー栽培は、19世紀後半にフランス人宣教師がフランス領インドシナから雲南省にコーヒーの木を持ち込んだことから始まりました。その後、長らく小規模な生産が続いていましたが、1988年にネスレが中国政府のグローバル企業誘致に応じ、栽培技術を導入したことで、近代的なコーヒー生産が本格的にスタートしました。世界銀行や国際連合開発計画もコーヒー導入を支援し、ネスレも雲南省を主要な生産拠点として展開しました。

2007年には、中国国内最大手のインスタントコーヒーメーカーである后谷咖啡が設立され、徳宏タイ族チンポー族自治州で大規模なコーヒー栽培を開始しました。后谷咖啡は、契約農業制度を通じて農地を集約し、苗木の植え付けから豆の収穫、買い付けまでを一貫して行うことで、効率的な生産体制を確立しました。

中国国内のコーヒー消費量は生産量の増加とともに拡大しており、2006年から2017年にかけて年平均22%の成長を遂げました。2021年にはコーヒー豆消費量が25万2,000トンに達し、世界8位の消費国となっています。しかし、一人当たりの年間消費量は約10杯程度にとどまっており、今後の成長が期待されます。

コーヒーの主な消費層はホワイトカラー労働者で、全体の約3割を占めています。次いで政府・学校・団体職員が15%、フリーランスやコーヒー産業従事者がそれに続きます。

生産地と品種

中国におけるコーヒー豆の約98%は雲南省で生産されています。雲南省の主な産地は、保山市、徳宏タイ族チンポー族自治州、孟連タイ族ラフ族ワ族自治県、普洱市です。特に普洱市は国内生産量の6割を占め、「中国コーヒーの都」として知られています。普洱市はコーヒーベルトに位置し、標高が高く、昼夜の寒暖差が大きく、降水量も豊富であるため、コーヒー栽培に最適な環境です。

雲南省では、アラビカ種とカトゥーラ種、そしてカティモール種が主に栽培されています。カティモール種は、ティモール・ハイブリッドとカトゥーラ種の交配種です。一方、福建省と海南省ではロブスタ種が主に栽培されています。

雲南省産のコーヒー豆は、浅煎りで口当たりが柔らかく、苦味が後を引かないのが特徴です。近年では、スペシャルティコーヒーの生産も増加しており、高品質化が進んでいます。

マーケティングと貿易

2016年には、雲南省で生産されたコーヒー豆の約半分が輸出され、2億8,000万ドルの収益を上げました。中国産のコーヒー豆は、主にヨーロッパへ生豆の状態で輸出されています。アメリカ合衆国も主要な輸出先であり、スターバックスはアメリカに輸入される中国産コーヒー豆の多くを購入しています。スターバックスは、普洱市にアジア太平洋地域初の栽培者支援センターを設立しました。

重慶市は中国国内最大のコーヒー取引の中心地であり、国産および東南アジア産のコーヒー豆を取り扱うコーヒー取引所が設立されています。重慶市は、一帯一路構想における重要な物流拠点であり、コーヒー豆の取引が活発に行われています。雲南国際コーヒー取引センターも設立され、普洱市でもコーヒー豆取引の拠点が設けられています。

その他の情報

中国のコーヒー市場は、今後も成長が期待されています。国内のカフェチェーンやコーヒーブランドも増加しており、競争が激化しています。「ラッキンコーヒー」は、「中国のスタバ」と称されるカフェチェーンです。また、小説家の馬伯庸は、短編小説『南方に嘉蘇あり』の中で、漢代にコーヒーが伝わっていたらという架空の歴史を描いています。

中国におけるコーヒー栽培は、歴史は浅いものの、その生産量と消費量は着実に増加しています。今後、中国がコーヒー市場においてどのような存在感を増していくのか、注目されます。

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