中国のアニメーション

中国のアニメーション（動漫）

中国のアニメーション、通称「動漫（ドンマン）」は、中国本土だけでなく香港や台湾を含む中国語圏で制作されるアニメーション作品を指します。中国語では「動畫（dònghuà ドンフア）」と呼ばれ、英語圏では「donghua」として知られています。

歴史

初期から1960年代

中国アニメーションの歴史は、1941年に上海で制作された長編アニメーション映画『西遊記 鉄扇公主の巻』から始まります。これはアジア初の長編アニメーションであり、戦時下の日本にも輸出され、手塚治虫や国産アニメ『桃太郎の海鷲』（1943年）に影響を与えました。監督の万籟鳴は、中華人民共和国建国後に上海美術映画製作所で精力的に活動し、アニメーション映画『大暴れ孫悟空』（1961年）で国際的な評価を得ました。しかし、1966年からの文化大革命により、中国のアニメ制作は一時的に停滞しました。

1980年代から1990年代

1978年の改革開放後、1979年には上海美術映画製作所が『ナーザの大暴れ』で再び国際的な評価を得ました。1980年から1981年にかけては、手塚治虫原作の『鉄腕アトム』が海外アニメとして初めて中国で放送され、これを機に日本や欧米から大量の海外アニメが中国に流入しました。

1980年代後半から1990年代にかけては、アニメ制作の国際分業化が進み、中国は日本や欧米のアニメ制作の下請けを行うようになりました。香港のショウ・ブラザーズが1985年に深圳で翡翠動画を立ち上げたのを皮切りに、台湾の制作会社も中国に制作拠点を設置し始めました。この流れに乗じて、日本企業も1988年から杭州に飛龍動画などを設立し、全盛期には日本のアニメの70%以上が中国で制作されるようになりました。中国企業は、深圳、上海、杭州、無錫などに集中し、日本やディズニーのアニメのキャラクターグッズ制作も行いました。

2000年代

2006年には、海外アニメの輸入・放送に関して、国産アニメの放送が全体の7割を下回ってはならない、国産アニメを制作した時間と同じ分まで海外アニメを輸入できる、17時から20時まで外国アニメーションの放送を禁止するなどの規定が定められました。2009年には、温家宝首相（当時）も「孫と見るのは海外のアニメばかり」と発言し、無錫のアニメ制作会社を視察した際にオリジナルアニメの制作を奨励しました。また、日中合作アニメ『チベット犬物語』の制作も支援しました。

2010年代

近年では、中国企業による日本のアニメスタジオの買収や日本人アニメーターの獲得も起きています。2015年に制作された3DCGアニメ『西遊記 ヒーロー・イズ・バック（西游記之大聖帰来）』は、中国の国産アニメで歴代1位の興行収入を記録し、2019年時点では世界60カ国で公開され、興行収入は200億円を超えました。2011年からネット配信の短編アニメとして制作されていた『羅小黒戦記』の劇場版が2019年に中国と日本で公開され、日本ではミニシアターでロングラン上映されました。また、2019年7月に公開された『ナタ〜魔童降臨〜（哪吒之魔童降世）』は、中国の映画市場で50億元（約770億円）の興行収入を記録し、アニメ映画として初めて中国映画市場の年間興行収入1位となりました。

市場規模

2009年には、中国のアニメ産業の市場規模は約2300億円となり、日本の2164億円を追い抜きました。中国には世界最大のアニメ視聴者が存在しています。また、アニメの年間制作分数は、日本が2006年を境に減少傾向にあるのに対し、中国では毎年増加しています。2010年には、中国は世界最大のアニメ生産国となりました。

中国のアニメーションは、その歴史の中で様々な変遷を遂げてきましたが、近年では国産アニメの台頭が著しく、世界のアニメ市場において重要な地位を占めるようになっています。今後も中国アニメーションの発展から目が離せません。

もう一度検索