中国の旅

中国の旅

『中国の旅』は、朝日新聞記者である本多勝一が執筆したルポルタージュ作品で、1972年に朝日新聞社から出版されました。この作品は、中国共産党の協力を得て、日中戦争中の日本の戦争犯罪を現地の視点から詳細に探求したものです。本書は1971年の夏に行った約40日間にわたる取材を基にしており、中国各地での証言や事件の現場を訪れることで、当時あまり知られていなかった出来事を明らかにしました。

書籍の背景

本多は、戦争中に日本軍が中国でどのように行動していたのかを、中国側の視点から明らかにすることを主な目的としていました。特に残虐行為に焦点を当て、虐殺や事件の現場を直接訪問し、被害者の証言を集めることに注力しました。このプロジェクトは、1970年の文化大革命の影響で日本の報道機関が次々に追放されていた時期に実現されました。本多と他の記者は1971年、入国許可を得て中国に入り、外交部新聞司の協力のもと、事件についての詳細な取材を行うことができました。

本書は、1971年8月から12月にかけて朝日新聞の夕刊に連載され、その後1972年に単行本として出版されました。連載は4部構成になっており、平頂山事件、万人坑、南京事件、三光政策の各章から成り立っています。特に南京事件については高い関心を集め、多くの議論を呼び起こしました。

作品の内容と反響

『中国の旅』は、日本の戦争犯罪を中国側の視点で伝えることによって大きな評価を得ましたが、同時に多くの批判も受けました。特に、中国共産党の意向に沿った編集が行われたとの指摘や、事実関係を巡る議論が活発に展開され、南京大虐殺や百人斬り競争といった問題が中心となりました。これにより、戦争責任や歴史認識についての激しい論争が起こることになりました。

出版後の影響

本書の連載は、多くの注目を集め、南京事件論争の引き金となりました。1983年には本多が再度中国を取材し、その成果を『南京への道』として発表しています。また、批判も多く、特に文藝春秋社の『諸君!』誌上で本多と山本七平との論争が展開されました。いくつかの満鉄関係者からも抗議が寄せられ、さらには諸問題が引用されたり、質疑応答において反論が行われることもありました。

近年では、本書に登場する写真に関して誤用の指摘もあり、本多が写真の改竄を認めた件などが話題となりましたが、書籍の内容についての回収や訂正は行われていません。これにより、本書はますます注目を集め、歴史における重要な証言として位置づけられることとなります。

まとめ

『中国の旅』は、日中戦争時の日本の行動を中国側から分析した貴重な資料でありながら、同時にさまざまな論争の対象ともなりました。本書は、日本人が歴史を見つめ直すための重要な指針として、今後もその影響を持ち続けることでしょう。

もう一度検索