中央仏教学院

中央仏教学院

中央仏教学院（ちゅうおうぶっきょうがくいん）は、京都市右京区に位置する浄土真宗本願寺派によって運営される私立の専門学校です。主に浄土真宗本願寺派の僧侶を育成することを目的としており、「中仏」という略称でも親しまれています。

概要

本学院は、浄土真宗本願寺派の付属専門教育機関として、1920年（大正9年）に西本願寺の敷地内に開設されました。その後移転を経て、1928年（昭和3年）に現在の地である本願寺角坊の隣接地に校舎が完成しました。

開設当初から一貫して本願寺派の僧侶養成を主眼としており、カリキュラムは読経の方法である声明や各種作法、布教の技術といった実践的な内容に加え、浄土真宗や仏教全体の教えや歴史を深く学ぶ講義で構成されています。入学資格は予科で中学校卒業以上とされており、年齢や国籍による制限はありません。学院生は寺院の後継者など若い世代が中心ですが、必ずしも僧侶資格取得を目指すわけではなく、純粋に浄土真宗の教えを深く学びたいという目的で入学する中年層や高年層の学生も少なくありません。さらに、通信教育課程は受講要件が柔軟であるため、より幅広い年齢層の人々が学んでいます。

設置学科

本学院には、通学制の学校教育部と、自宅等で学べる通信教育部があります。

学校教育部

研究科
内容：既に修得した真宗や仏教の基礎知識の上に立ち、三経・七祖聖教・本典といった重要な経典の読解、安心論題に関する体系的な研究を行います。また、倶舎・唯識・華厳・天台といった他宗派の教義理解を深めるとともに、伝道全般の理論や社会と仏教の関係、寺院運営に関する「住職坊守学」などを学びます。勤式作法についても、理論と実践の両面から習得します。
修業年限：1年
定員：30名
応募資格：本科卒業者、または浄土真宗本願寺派の教師資格授与者
特典：研究科を卒業し、院長の推薦を受けた上で宗務所の審査を経た者は、本願寺派の学階「得業」の予試および本試が免除され、勧学寮が行う殿試の受験資格が得られます。また、成績優秀者には、龍谷大学大学院実践真宗学研究科修士課程への推薦入学制度があります（大学卒業者に限る）。
本科
内容：浄土真宗本願寺派の教師となるための基礎資格を取得することを目的とします。浄土三部経、七高僧、宗祖親鸞聖人の教えの大要、安心の体系的な学習に加え、真宗史、仏教史、宗教概論などを教授します。さらに、寺院の運営方法、伝道のあり方、勤式作法の理論と実践指導などを行い、現場で活かせる実践力のある僧侶の育成を目指しています。
修業年限：1年
定員：120名
応募資格：高等学校卒業者、または予科修了者
特典：本科卒業者には、成績等により研究科への推薦入学制度や、教師教修出願資格試験講習会の免除が与えられます。
予科
内容：真宗、仏教、宗教に関する基本的な知識の習得、伝道や勤式に関する実習などを行います。本科へのスムーズな進学のための基礎教育として、国語（漢文含む）、倫理社会、英語、数学などの一般教養科目も学びます。
修業年限：1年
定員：10名
応募資格：義務教育修了者
特典：予科を修了すると本科の出願資格が得られるとともに、得度講習会の得度習礼および得度考査が免除されます。

通信教育部

通信教育課程は、1962年（昭和37年）に創設され、現在は以下の3つのコースを設置しています。自宅での学習に加え、複数回のスクーリング（対面授業）や修了試験が課されます。

専修課程
目的：浄土真宗本願寺派の僧侶資格取得を目指します。
修業年限：3年間で8教科22科目を履修します。
学習課程
目的：浄土真宗や仏教を体系的に深く学びたい方を対象とします。
修業年限：3年間で5教科15科目を履修します。
入門課程
目的：仏教や浄土真宗に初めて触れる方が、基礎的な教えを学ぶためのコースです。
修業年限：1年間です。

沿革

1920年（大正9年）5月 - 京都府より設置認可を受け、西本願寺境内に開校。修業年限2年と4年の2部制で開始。
1922年（大正11年）1月 - 淳風会館（現・京都教区教務所）へ移転。同年9月、西山別院（現・本願寺西山別院など）へ移転。
1928年（昭和3年）7月 - 現在地の本願寺角坊別院隣接地へ移転、校舎および寄宿舎が竣工。
1931年（昭和6年）10月 - 女子部を新設。
1941年（昭和16年）5月 - 学科編成を専修科（1年）、本科1部（2年）、2部（4年）に改定。
1945年（昭和20年）4月 - 戦時疎開のため1年間休校。11月、臨時教師養成所を開設。
1946年（昭和21年）4月 - 復校。
1950年（昭和25年）4月 - 研究科（本科修了生対象の専門課程）を新設。
1962年（昭和37年）11月 - 創立50周年記念として通信教育課程を創設。
1977年（昭和52年） - 通信教育課程に専修課程（Aコース）と学習課程（Bコース）を設ける。
1981年（昭和56年）6月 - 鉄筋コンクリート3階建ての現校舎が竣工。
1997年（平成9年） - 通信教育課程に入門課程を創設。男女学生寮「馮翊寮」および新講堂が竣工。
2003年（平成15年）11月 - 図書館「馮翊会館」が竣工。

歴代院長

創立以降、多くの学識経験者や宗派関係者が院長を務めています。

後藤澄心 (1920-1924)
西崎憲英 (1924-1925)
高木俊一 (1925-1933)
山崎精華 (1933-1939)
西本貞然 (1939-1941)
緇川見城 (1941-1944)
埜上覐道 (1944-1947)
西岡義融 (1947-1958)
服部成教 (1958-1960)
八雲円成 (1960-1975)
土井忠雄 (1975-1987) - 仏教学者、勧学
三宮義信 (1987-1995)
中西智海 (1995-2001) - 仏教学者、勧学
北畠晃融 (2001-2009)
白川晴顕 (2009-2016)
北塔光昇 (2016-2022)
丘山新（願海） (2022-) - 東京大学教授、本派総合研究所所長

主な出版物

教育活動の一環として、講本や記念誌などが刊行されています。

中央仏教学院一覧 (1940)
馮翊講和集 (1980)
中央仏教学院のあゆみ (1980、2011)
真宗要説、仏教要説、宗教要説 (1979)
和讃要義 (上・下) (1979)
三経要義、七祖要義、本典要義 (1980)
各宗要義 (上・下) (1980)
インド、中国仏教史 (1981)
日本仏教史 (1981)
真宗史 (1981)
伝道要義 (1981)
同朋運動要説 (1981)
親鸞聖人伝 (2011)
仏の大悲心を学ぶ (2011)

特色ある出身者

様々な分野で活躍する人物を輩出しています。

大平光代（弁護士）
花岡大学（童話作家）
住宅顕信（俳人）
土井忠雄（仏教学者）
徳岡秀雄（教育学者）
公方俊良（評論家）
三浦隆夫（評論家）
中屋大介（政治家、元衆議院議員）
鈴木信行（政治家、前葛飾区議会議員）

所在地

〒615-0091　京都市右京区山ノ内御堂殿町27

関連項目

行信教校
東京仏教学院
広島仏教学院
福岡仏教学院（現在は閉校）

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