花岡大学

花岡大学（はなおか だいがく）

花岡大学（1909年2月6日 - 1988年1月29日）は、日本の童話作家、小説家、児童文学作家、そして仏教の僧侶という多才な顔を持つ人物です。本名は如是（ゆきよし）、僧侶としては大岳という名を持ちました。浄迎寺の住職を務める傍ら、京都女子大学の名誉教授としても教鞭を執りました。

生涯

花岡大学は、奈良県吉野郡大淀町佐名伝（現在の五條市）にある浄迎寺の次男として大阪で生まれました。幼少期から文学に親しみ、奈良県立五條中学校に進学しますが、5年生の時に突然退学し、京都市の中央仏教学院で中等教育を終えました。その後、龍谷大学に進み、史学科を卒業しました。

中学時代から創作活動を始め、龍谷大学在学中には自費出版で『魑魅魍魎』を刊行。卒業後は、大阪府や奈良県の小学校、高等女学校で教鞭を執りながら作家を目指しました。

1936年、毎日新聞の児童雑誌『大毎コドモ』に掲載された童話が好評を博し、童話作家としての道を歩み始めます。同年には上原弘毅とともに童話作家連盟（後に童話作家クラブと改称）を設立し、『童話作家』を発行。1938年には岡本良雄らと『新童話文学集団』を発刊するなど、創作活動に積極的に取り組みました。特に仏教経典に基づいた仏典童話を数多く創作したことで知られています。

同年9月には召集を受け、歩兵第38連隊に入隊。この時、後に東大寺の長老となる清水公照と出会い、共同制作へと繋がっていきました。

1941年には童話集『月夜の牛車』でその才能が認められ、1948年には自身の家庭をモデルとしたNHKラジオドラマ『清願寺の子どもたち』が放送され、大きな反響を呼びました。

1956年には吉野史談会を設立し、郷土の歴史をテーマにした機関誌『吉野風土記』を編集。1960年には、弟子である川村たかしらと近畿児童文化協会を設立し、『近畿児童文化』を発刊。後進の育成にも力を注ぎました。

1965年に奈良県立大淀高等学校を退職後、京都女子大学の助教授、後に教授に就任。龍谷大学や大谷大学でも講師を務めました。1970年には川村たかしらと『幼年芸術』を創刊。児童文学の研究にも貢献しました。1974年に京都女子大学を定年退職後は、奈良文化女子短期大学の教授として教鞭を執りました。

児童文学作家としての花岡大学は、宮沢賢治や小川未明と並び称されることもあり、第二次世界大戦後には数々の作品を発表。1960年に短編集『かたすみの満月』で小川未明文学賞奨励賞、1961年には『ゆうやけ学校』で小学館文学賞を受賞しています。1986年には、浄迎寺の北方に花岡大学童話碑が建立されました。

司馬遼太郎は新聞記者時代から花岡と交流があり、エッセイなどで互いの文学について言及しています。

作品

花岡大学の作品は多岐にわたり、童話、小説、仏教書、歴史書など、幅広いジャンルに及びます。特に仏教的なテーマを盛り込んだ童話は、多くの人々に感銘を与えました。主な著作は法藏館の『花岡大学仏典童話全集』（全8巻）に収録されています。

代表作として、『月夜の牛車』『かたすみの満月』『ゆうやけ学校』などがあります。

受賞歴

1960年：『かたすみの満月』で小川未明文学奨励賞
1961年：『ゆうやけ学校』で小学館文学賞
1977年：正力松太郎賞
1977年：『月の顔』でサンケイ児童出版文化賞
1980年：仏教伝道文化賞
西本願寺門主賞

花岡大学は、その生涯を通じて、文学、教育、仏教という多角的な視点から、人々に深い感動と学びを与え続けました。彼の作品は、今もなお多くの人々に読み継がれています。

主な著書

『聖戦の歌を語る』（興教書院） 1940
『勲章』（横山書店） 1942
『小さな村のランプ』（百華苑） 1948
『さるとラッパ』（東山書房） 1948
『花ぬすっと』（百華苑） 1949
『かたえくぼの歌』（奈良文庫） 1949
『月夜念仏』（永田文昌堂） 1952
『みどりのランプ』（講談社） 1959
『赤とんぼの空』（理論社） 1960
『かたすみの満月』（百華苑） 1960
『ゆうやけ学校』（理論社） 1961
『世界民話の旅 みんなきょうだい』（理論社） 1962
『笑う山脈』（講談社） 1963
『地獄のラッパ』（百華苑） 1963
『七〇人の人間像 あの道この道』（百華苑） 1963
『欲ばりの赤てんぐ』（大阪教育図書） 1964
『百羽のツル 童話集』（実業之日本社） 1965
『三分間講話 心にしみる朝礼のタネ』（実業之日本社） 1965
『妙好人清九郎』（百華苑） 1966
『児童文学の世界』（大阪教育図書） 1967
『三分間エピソード』（実業之日本社） 1967
『新・三分間講話』（実業之日本社） 1968
『ひとりぼっちの念仏 放送講話集』（百華苑） 1968
『聖書ものがたり』（集英社） 1968
『チベットの風』（実業之日本社） 1969
『新・仏教童話全集』全8巻・別巻1（法蔵館） 1969 - 1970
『児童文学の探究』（大阪教育図書） 1969
『あんずぬすっと』（学習研究社） 1970
『虚仮記』（法蔵館） 1970
『やわらかい手 短篇童話集』（構造社） 1970
『ピイナのちえ』（学習研究社）1970
『人生の花たば』（佼成出版社） 1971
『逸話による人生講話』（大阪教育図書） 1971
『うろこ雲』（実業之日本社） 1972
『こしぬけ左門』（岩崎書店） 1972
『でこぼこ道』（あすなろ書房） 1972
『きんのはくちょう』（PHP研究所） 1972
『くも合戦 こがねぐもの一生』（文研出版） 1973
『とんがりぼうしのぎんのすず』（百華苑） 1973
『王さましかのねがい』（岩崎書店） 1973
『幼年文学についての走り書き的覚書』（大阪教育図書） 1974
『カランバの鬼』（理論社） 1975
『空飛ぶ金のしか』（旺文社） 1975
『六べえとクマンバチ』（あすなろ書房） 1975
『かえってきた白鳥』（PHP研究所） 1976
『月の顔』（PHP研究所） 1977
『あばれんぼうのこどもライオン』（旺文社） 1977
『ここに生きる道がある 心に残るエピソード集』（PHP研究所） 1977
『おにのめん』（小学館） 1977
『南無の世界 親鸞へのひとすじの思慕』（PHP研究所） 1977
『月の道』（PHP研究所） 1978
『おうさまになったこびと』（文研出版） 1978
『限りある命を生きる』（ミネルヴァ書房） 1979
『赤いみずうみ』（探究社） 1979
『大乗仏典のこころ』（法蔵館） 1980
『花岡大学童話文学全集』全6巻（法蔵館） 1980
『三分間人生講話 第1巻 魂の奔流・いま立ち止まってはならない』（同朋舎出版） 1980
『三分間人生講話 第2巻 人間山脈・われわれは何をなすべきか』（同朋舎出版） 1980
『三分間人生講話 第3巻 愛の心・人間、このすばらしきもの』（同朋舎出版） 1980
『東大寺の伝説』（法蔵館） 1980
『続仏典童話全集』1 - 2（法蔵館） 1981
『くびかざりぬすっと』（同朋舎出版） 1981
『500ぱのかも』（同朋舎出版） 1981
『センタンのほどこし』（同朋舎出版） 1981
『どくのへび』（同朋舎出版） 1981
『どっぼんライオン』（同朋舎出版） 1981
『花岡大学仏教随想選集』（探究社）
『よろこびいっぱいの念仏』 1983
『親鸞へのひとすじの道』 1984
『火と燃えあがる信心』 1984
『いたずらこだぬき おじいのとっておきの話』（PHP研究所） 1983
『消えない声 仏典童話』（佼成出版社） 1984
『妙好人の世界』（弥生書房） 1984
『世界一の石の塔』（戸田デザイン研究室） 1984
『仏典童話新作集1 うそをつかない王さま』（法蔵館） 1984
『仏典童話新作集2 白いひげのおじいさん』（法蔵館） 1984
『仏典童話新作集3 ほとけの目』（法蔵館） 1984
『百羽のツル』（戸田デザイン研究所） 1986
『かもしかのこえ』（善本社） 1986
『ヒマラヤのはと』（善本社） 1986
『笑うおしゃかさま』（善本社） 1986
『子うしのはなし』（PHP研究所） 1987
『人間錬磨のすすめ 歴史に学ぶ真の指導者像』（佼成出版社） 1987
『花岡大学仏典童話1 消えない灯』(筑摩書房) 1990
『花岡大学仏典童話2 金の羽』(筑摩書房) 1990

翻訳・共著

『八犬伝物語』（馬琴、講談社） 1966
『千早城のまもり 太平記』（小峰書店） 1966
『鬼のしくじり パンチャタントラ物語』（小峰書店） 1969
『日本のまほう話』（偕成社） 1972
『奈良の伝説』（岩井宏実共著、角川書店） 1976
『伊勢・志摩の伝説』（駒敏郎共著、角川書店） 1979
『若狭・越前の伝説』（駒敏郎共著、角川書店） 1980
* 『おおきなおとどっすん』（すずき出版） 1988

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