中尊寺金色堂

中尊寺金色堂：平安時代の輝きを今に伝える至宝

中尊寺金色堂は、岩手県平泉町の中尊寺境内に鎮座する、平安時代後期（1124年建立）の仏堂です。奥州藤原氏初代、藤原清衡によって建立されたこの堂は、平等院鳳凰堂と並ぶ平安時代浄土教建築の代表作であり、当時の高度な建築技術と美術工芸の粋を集めた国宝として、日本を代表する文化財の一つに数えられています。

建築と堂内装飾

金色堂は、方三間（正面・側面ともに柱間が3間）の小型仏堂で、東西約5.5メートルのシンプルな構造です。1965年に建設された鉄筋コンクリート製の覆堂内に安置され、ガラス越しにその姿を拝することができます。

棟札には、天治元年（1124年）の建立年と、藤原清衡、そして安倍氏、清原氏、平氏といった氏族名、さらに物部清国という大工の名前が記されており、建立年代は科学的にも裏付けられています。文治5年（1189年）の文書には「金色堂 上下四壁は皆金色なり」と記され、当時から「金色堂」と呼ばれていたことがわかります。

建築形式は、正面・側面ともに3間で、一部に板扉を持つ横板壁となっています。円柱を用いた柱、三斗の組物、宝形造の屋根など、阿弥陀堂建築の特徴がよく表れています。内部には4本の入側柱が立ち、内陣と外陣を区切っています。内陣には金工・漆芸で装飾された須弥壇があり、阿弥陀三尊像などの仏像が安置されています。

特筆すべきは、その装飾です。金色堂は、その名のとおり内外装が総金箔貼りで、漆塗りの上に金箔を施した豪華な造りとなっています。柱は巻柱と呼ばれる技法で、ヒバ材の八角柱に杉材を貼り付けて円柱とし、蒔絵や螺鈿で宝相華文や仏像が表現されています。漆工芸による仏像表現は、非常に珍しい技法です。須弥壇や天井にも螺鈿や金工による精緻な装飾が施されています。

藤原四代の御神体と副葬品

金色堂の須弥壇内には、藤原清衡、基衡、秀衡の遺体と、泰衡の首級が安置されています。1950年の学術調査により、寺伝とは異なり、左壇が秀衡、右壇が基衡と判明しました。遺体のミイラ化については、自然現象か人為的なものか、議論が続いています。副葬品には、白装束、刀剣、念珠などがあり、平安時代の生活や信仰を知る上で貴重な資料となっています。

特に注目すべきは、アフリカゾウの象牙を用いた中央壇の高欄です。これは、奥州藤原氏の高い財力と国際的な交易を示す証拠です。また、泰衡の首桶からは、後に「中尊寺蓮」として開花したハスの種子が見つかりました。

仏像

金色堂には、中央壇、左壇、右壇それぞれに阿弥陀三尊像を中心とした仏像群が安置されています。これらの仏像は、制作年代や技法、材質などから、複数回にわたる造立・改修が行われたものと推定されています。各像の様式や配置から、建立当初の姿や、その後に行われた改変の様子を推測することができます。

堂内具

金色堂内部には、礼盤、螺鈿平塵案、磬架、金銅幡頭、金銅華鬘など、数多くの仏具が安置されています。これらも精緻な装飾が施され、国宝に指定されています。

建物の保存

金色堂は建立当初は屋外にありましたが、後に覆堂が建設され、保護されてきました。1962年から1968年にかけて大規模な解体修理が行われ、建立当時の姿に復元されました。

文化財指定

金色堂は、1897年に特別保護建造物、1951年に国宝に指定されました。堂内仏像や堂内具、副葬品なども、国宝または重要文化財に指定されています。

まとめ

中尊寺金色堂は、平安時代の高度な建築技術と美術工芸、そして奥州藤原氏の栄華を伝える貴重な文化財です。その豪華な装飾と歴史的意義は、後世に語り継がれるべきものです。

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