中尾佐助

中尾佐助 — 日本の植物学者

中尾佐助（なかおさすけ、1916年8月16日 - 1993年11月20日）は、日本で著名な植物学者です。彼の専門分野は遺伝育種学と栽培植物学ですが、特に「照葉樹林文化論」の提唱でよく知られています。この概念は、ヒマラヤ山麓から中国西南部を経て西日本に至る照葉樹林帯における文化的な共通性に着目したものです。大阪府立大学の名誉教授としても名を馳せました。

経歴

中尾は1916年に愛知県豊川市金屋町で生まれ、1935年に第八高等学校理科甲類に入学後、1939年には京都帝国大学農学部に進学し、1941年に卒業しました。この時期から、彼は植物学の研究に没頭し、1943年には京都帝国大学理学部の応用植物学講座副手として採用されます。1942年、彼は日本陸軍に召集されるも、すぐに召集解除となり、木原生物学研究所で働き始めました。

続いて、1944年に蒙古聯合自治政府の西北研究所に所属しますが、1945年には再び召集され、終戦を迎えます。帰国後、木原生物学研究所に戻り、その後浪速大学へと進むことになります。

1949年からは、浪速大学の農学部で遺伝育種学講座を担当し、1951年には助教授、1961年には教授に昇格。1962年には、学位論文「Studies on the taxonomy, origins and transmittance of the crops in the Sino-Himalayan range」を通じて農学博士の学位を取得しています。1980年に大阪府立大学を定年退職し名誉教授となった後、鹿児島大学の教授として活躍。1982年に鹿児島大学を定年退職しました。

研究と業績

中尾は、在学中から朝鮮北部やモンゴル、ネパール、ブータン、インド北東部、さらにはミクロネシアやサハリンなどの地域を探検し、植物分布に関する学術調査を行いました。1952年には日本山岳会のマナスル踏査隊に参加し、1958年には日本人として初めてブータンを訪問、単独でその地を踏査しました。

特にヒマラヤの照葉樹林帯における植生や生態系の調査を通じて、地域の文化と日本との共通点を見出し、後に佐々木高明と共に「照葉樹林文化論」を提唱することになります。この研究は、植物学だけでなく、文化人類学的視点からも評価され、多くの影響を与えました。

受賞歴

中尾は多くの賞を受賞しており、1960年には『秘境ブータン』により第8回日本エッセイストクラブ賞を、1962年にはなにわ賞を受賞しました。1987年には『花と木の文化史』に対して第41回毎日出版文化賞を受賞し、1989年には勲三等旭日中綬章を授与されます。さらに、1990年には栽培植物と農耕の起源に関する文化的研究により第26回秩父宮記念学術賞を受賞しました。

影響と後進への指導

中尾の教育と研究は多くの学者に影響を与えました。特に彼の教え子である西岡京治は、ブータンの農業技術指導に尽力し、国の恩人として高く評価されています。

著作

彼の著作には『ニジェールからナイルへ 農業起源の旅』や『栽培植物の世界』などがあり、照葉樹林文化や農業の起源に関する洞察を深めています。他にも、多くの共著や編著書が存在し、その研究成果が広く人々に知られています。

結び

1993年に中尾は逝去しましたが、彼の業績は今なお多くの研究者に影響を与え続けています。彼の墓は京都の嵯峨野天龍寺にあります。中尾佐助の業績は、植物学だけにとどまらず、文化と科学の交差点に立つ重要な研究として認識されています。

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