西岡京治

西岡京治：ブータン農業の父

西岡京治（にしおか けいじ、1933年2月14日 - 1992年3月21日）は、日本の農業指導者、植物学者です。海外技術協力事業団（現在の国際協力機構）に所属し、ブータンの農業発展に多大な貢献をしました。彼は「ブータン農業の父」と称され、ブータン国王から最高位の称号である「ダショー」を贈られています。現地では「ダショー・ニシオカ」として広く知られています。

生い立ちと学問

西岡京治は、1933年に日本統治下の朝鮮、京城府（現在のソウル）で解剖学者の父、西岡辰蔵と母、利恵の長男として誕生しました。第二次世界大戦後、日本に帰国し、大阪府八尾市に移住しました。大阪府立八尾高等学校を卒業後、大阪府立大学農学部（現・生命環境科学部）に進学し、海外農業研究会に所属しました。大学院では、農学研究科に進み、中尾佐助に師事し、大阪市立大学大学院理学研究科研究生として川喜田二郎の薫陶を受けました。

学術調査と発見

1958年、川喜田二郎を隊長とする大阪市立大学西北ネパール学術調査隊に参加し、二条大麦および六条大麦の野生種を発見しました。この発見は、大麦栽培史における重要な空白部分を埋める学術的成果として評価されています。

ブータンでの活動

1964年、西岡は海外技術協力事業団の農業指導者としてブータンに派遣されました。当初はインド人が多数を占める農業局から冷遇を受け、試験農場すら十分に用意されない状況でした。しかし、西岡は28年間にわたり、日本から導入した野菜の栽培、品種改良、荒地の開墾など、ブータンの農業振興に尽力しました。彼の指導は、一方的な援助ではなく、現地の状況に合わせた漸進的なものであったため、非常に大きな成功を収めました。西岡の活動は、農法だけでなく、産業や生活基盤の改善にも大きく貢献しました。

ダショーの称号

1980年、西岡京治は当時のブータン国王、ジグミ・シンゲ・ワンチュクから、民間人に贈られる最高の爵位である「ダショー」を授与されました。これは、彼がブータンに貢献したことに対する最高の評価であり、外国人として初の受爵者となりました。

死と遺産

1992年3月21日、西岡京治は帰国直前に敗血症でブータンの首都ティンプーで亡くなりました。59歳でした。彼の遺体は、夫人の意向により、パロ盆地を見渡せる丘の葬儀場に埋葬されました。ブータン王室と政府は、西岡の功績を称え、国葬を執り行いました。

西岡の言葉として「この国は貧しい。しかしそれぞれが幸せに思える国になってほしいと願いを込めて、わたしの持っている農業の知識をブータンの人々に教え続けた28年間は無駄ではなかった」という言葉が残されています。この言葉は、彼のブータンに対する深い愛情と献身を表しています。

没後の評価と記念

西岡京治は、ブータンにおける「近代農業の父」として記憶されており、ブータン南部のパンパンには、彼の名前を冠した吊り橋「西岡ザム」が設置されています。2006年には、日本の中学校の道徳資料集や英語教科書に彼の活動が紹介され、2014年にはパロの国立農業機械化センター内に記念館が完成しました。

主な著書

中尾佐助共著『ブータンの花』(1984年)　後に北海道大学出版会より再版
西岡里子著、西岡京治写真『ブータン神秘の王国』(1978年、1998年)

西岡京治の生涯は、国際協力の模範として、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

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