中尾城の戦い

中尾城の戦いとは

中尾城の戦いは、天文19年11月21日（1550年12月28日）に、山城国中尾城（現在の京都府京都市左京区浄土寺）を舞台に繰り広げられた戦いです。この戦いは、室町幕府の権威回復を目指す足利義輝と、京都の実権を握る三好長慶との間で発生しました。

戦いの背景

天文18年（1549年）6月の江口の戦いで細川晴元が三好長慶に敗北すると、晴元は室町幕府13代将軍・足利義輝とその父である足利義晴を伴い、京都から近江国へと逃れました。これにより、三好長慶は京都を掌握し、幕府に代わって政治を取り仕切るようになりました。

危機感を抱いた足利義晴は京都奪還を計画し、10月18日に中尾城の築城を開始します。しかし、その翌年、義晴は病死（または自害）します。それでも、義輝は長慶打倒の意志を固め、晴元と共に中尾城に入城し、勢力回復を目指しました。

戦いの経過

天文19年（1550年）7月、足利義輝と細川晴元は、中尾城から出兵し、東山麓の吉田・浄土寺・北白川へと進軍します。これに対し、三好長慶は1万8000の大軍を率いて京都に上洛し、市街戦が勃発しました。しかし、細川晴元や六角軍は動かず、小規模な戦闘にとどまりました。この際、幕府軍の鉄砲によって三好軍の武将が戦死したという記録が残っており、日本における初期の鉄砲使用例として注目されています。

その後、両軍は一時撤退しましたが、10月に三好軍が再び京都へ侵攻し、小規模な戦闘が繰り広げられました。11月に入ると、三好長慶は積極的な攻勢に転じ、中尾城周辺に放火し、さらに近江へも派兵して、足利義輝を心理的に追い詰めます。この状況に危機感を覚えた義輝は、11月21日に中尾城を放棄し、近江へと撤退しました。

中尾城は、その2日後に三好軍によって破却されました。この戦いにより、三好長慶は当面の京都の安全を確保しましたが、翌年には幕府軍による襲撃や暗殺未遂事件が発生し、再び防衛戦を余儀なくされます。

戦いの影響

中尾城の戦いは、戦国時代の京都における有力武将の勢力争いを象徴する出来事です。足利義輝の京都奪還の試みは失敗に終わり、三好長慶が京都における支配を強めることとなりました。しかし、この戦いは後の京都の情勢に大きな影響を与え、戦国時代の動乱をさらに深めることとなります。

参考文献

戦国合戦史研究会 編『戦国合戦大事典 六 京都・兵庫・岡山』新人物往来社、1989年、87-89頁。
長江正一『三好長慶』（新装版）吉川弘文館〈人物叢書〉、1989年（原著1968年）、109-115頁。ISBN 978-4-642-05154-5。
今谷明『戦国三好一族 天下に号令した戦国大名』洋泉社〈MC選書〉、2007年、154-161頁。
福島克彦『畿内・近国の戦国合戦』吉川弘文館〈戦争の日本史11〉、2009年、105-108頁。

関連項目

* 畿内・近国の戦国時代

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