中山みき

中山みき：天理教の教祖「おやさま」の生涯と教え

中山みき（1798年6月2日 - 1887年2月18日）は、天理教の教祖であり、信者からは親しみを込めて「おやさま」と呼ばれています。彼女の生涯は、人々の救済を願う情熱と、神の啓示に従って生きる姿に彩られています。

生い立ちと結婚

中山みきは、1798年に大和国山辺郡三昧田村（現在の奈良県天理市）で生まれました。幼少の頃から慈悲深く、信仰熱心であったと伝えられています。1810年、13歳で中山善兵衞に嫁ぎました。天理教では、この中山家の地所を「元のやしき」と呼び、人間世界創造の起源として重要視しています。

立教

1838年、長男・秀司の足の病の回復を祈るため、みきは修験者の祈祷に立ち会います。その際、神霊が憑依する依り坐（よりまし）の代わりを務めたことで、彼女に天啓が下り、「月日（神）のやしろ」に召されたとされています。この時、親神・天理王命（てんりおうのみこと）がみきに憑依し、「世界一列をたすける」ために天降ったと告げました。当初、家族は神の申し出を拒みましたが、みきの強い意志により、最終的に夫の善兵衛が承諾し、天理教が立教されることとなりました。

布教活動と弾圧

立教後、みきは貧しい人々に財産を分け与え、神命に従って行動しました。しかし、その言動は周囲の誤解を招き、家族や村人からは狂気扱いされることもありました。1853年に夫が亡くなると、みきは五女のこかんに浪速（現在の大阪）で神名を広めさせました。また、安産祈願である「をびや許し」を始めたことが評判を呼び、みきの教えは徐々に広まっていきました。

1864年頃には、みきを慕う人々が増え、専用の「つとめ場所」が建築されました。また、天理教の救済手段とされる「さづけ」を始め、信者に扇を授けて神意をはかることができるとしました。しかし、みきの教えは、医者や薬を否定するものとして、地元の宗教家や医師からの反発を招き、警察の取り締まりを受けるなど、権力との対立が表面化しました。

『みかぐらうた』と『おふでさき』

迫害を受けながらも、みきは布教活動を続けました。1866年には、『あしきをはらひて たすけたまへ てんりん（てんり）おうのみこと』の歌と手振りを教示し、翌年には『御神楽歌（みかぐらうた）』の製作を開始しました。また、1869年からは『おふでさき』を書き始め、神の教えを人々に伝えました。これらの歌や書物は、現在も天理教の重要な教典として用いられています。

死去とその後

度重なる弾圧の中、みきは1887年に88歳で亡くなりました。彼女の死後、天理教は教団としての組織を整え、布教活動をさらに拡大していきました。現在、天理教は世界中に信者を持ち、人々の救済と幸福を願う教えを広め続けています。

教団への指摘

一方で、現在の天理教の教えが、教祖である中山みきの教えから歪曲されているという指摘もあります。明治期の改革や第二次世界大戦中の革新によって、みきの主張が権力に迎合する形で変えられたという見解もあります。また、みき自身が教会公認や設置運動に否定的であったという批判もあります。

学者による考察

天理教を研究する学者の中には、中山みきの立教の背景に、家族の問題や精神的な苦悩があったとする考察もあります。また、みきの教えには、民衆による反天皇制の思想や平等感、ヒューマニズムといった近代的な思想が表現されていたとする見解もあります。

中山みきの生涯は、神の啓示を受け、人々の救済のために尽力した宗教家の姿を伝えています。彼女の教えは、現代においても多くの人々に影響を与え続けています。

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