中山幹夫

中山幹夫氏は、1947年に生まれた日本の経済学者です。その専門は、複数の主体間における意思決定や相互作用の分析を行うゲーム理論にあります。長年にわたり日本の高等教育機関で教鞭を執り、現在は流通経済大学経済学部の教授を務めています。また、過去には慶應義塾大学で教授として活躍し、現在は同大学の名誉教授でもあります。東京工業大学から理学博士の学位を取得しており、ゲーム理論における理論的な背景も有しています。

富山県出身の中山氏は、学問の道を東京工業大学で始めました。1970年に工学部社会工学科を卒業後、さらに学びを深めるため大学院へ進み、1972年に理工学研究科修士課程を修了しています。大学院での修士論文のテーマは「微分ゲームによる計画の最適仮定」であり、この時期から後の専門分野であるゲーム理論に関連する研究に取り組んでいたことが分かります。

修士課程修了後、1973年には母校である東京工業大学で助手として研究者のキャリアをスタートさせました。その後、1975年から1978年にかけては富山大学経済学部に勤務し、短期間のうちに講師、助教授、そして教授へと昇進しました。富山大学での経験は、経済学の視点からゲーム理論を捉える上で重要な期間だったと言えるでしょう。

再び東京工業大学に戻った後、1983年には同大学から博士（理学）の学位を取得しました。これは、ゲーム理論という数学的アプローチを多用する分野における、その確固たる理論的基盤と研究能力を示すものです。

国際的な視野を広げるため、1987年から1988年にかけてはアメリカ合衆国へ渡り、ノースウェスタン大学のケロッグ経営大学院で訪問研究員として研究に従事しました。海外での経験は、最先端の研究動向に触れる機会となり、その後の研究活動に大きな影響を与えたと考えられます。

帰国後の1989年には、法政大学経済学部の教授に就任しました。さらに1997年には、日本の私学の最高峰の一つである慶應義塾大学経済学部へ移籍し、ここでも教授として長年にわたり教育・研究活動に貢献しました。これらの大学で、中山氏は多くの学生や若手研究者にゲーム理論を教え、その普及と発展に尽力しました。

2013年からは、現在の所属である流通経済大学経済学部の教授として、引き続きゲーム理論の研究と教育に情熱を注いでいます。

学術的な師としては、「日本のゲーム理論の父」と称される著名な経済学者、鈴木光男氏の門下である点が特筆されます。鈴木氏から受けた指導は、中山氏のゲーム理論に対する考え方やアプローチに深く根ざしていると言えるでしょう。

中山氏の業績の一つに、ゲーム理論における核となる概念の一つである『Nucleolus』（ヌクレオラス）の日本語訳を『仁』（じん）としたことが挙げられます。この翻訳は、専門用語の概念を日本の文化や感覚にもなじみやすい言葉で表現しようとする試みであり、日本のゲーム理論研究者や学習者が概念を理解する上で貢献しています。

また、ゲーム理論の普及と教育に資する複数の著書を執筆しています。主な単著としては、ゲーム理論の基本原理を分かりやすく解説した『はじめてのゲーム理論』（有斐閣, 1997年）、そしてゲーム理論の応用例やより発展的な内容を含む『社会的ゲームの理論入門』（勁草書房, 2005年）があります。さらに、船木由喜彦氏、武藤滋夫氏との共著である『ゲーム理論で解く』（有斐閣, 1997年）では、具体的な経済・社会問題をゲーム理論を用いてどのように分析し解決するかを示しています。これらの著作は、ゲーム理論をこれから学ぶ学生や、専門知識を深めたい研究者にとって、貴重な入門書や参考書となっています。

中山幹夫氏は、その多岐にわたる教育・研究活動を通じて、日本のゲーム理論の発展と普及に貢献し続けている経済学者です。

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