中山茶臼山古墳

中山茶臼山古墳：吉備地方の歴史を語る巨大前方後円墳

岡山県岡山市北区吉備津に位置する中山茶臼山古墳は、前方後円墳として知られる大型古墳です。吉備の中山と呼ばれる独立丘陵上に築造され、その雄大な姿は、現在でも当時の技術力の高さを物語っています。宮内庁によって第7代孝霊天皇皇子である大吉備津彦命の墓と治定されており、古くから神聖な場所として扱われてきました。

墳丘の規模と特徴

中山茶臼山古墳は、前方部が南向きに開いた「バチ形」と呼ばれる特徴的な形状をしています。墳丘は2段に築かれており、表面には葺石が確認されています。また、出土した埴輪から、かつては埴輪列が墳丘を飾っていたと推測されています。

2008年度の宮内庁書陵部による測量調査の結果によると、墳丘の長さは約105メートル。後円部は楕円形で、長軸約68メートル、短軸約64メートル、高さ約11メートル。前方部は長さ約63メートル、幅約45メートル、高さ約5メートルという巨大な規模です。くびれ部の幅は約23メートルです。以前は墳丘長が約120メートルとされていましたが、この調査で修正されました。興味深いことに、奈良県天理市の行燈山古墳（伝崇神天皇陵）との間に、2分の1相似形という関係性が指摘されています。

築造時期と性格

古墳時代前期頃の築造と推定されていますが、具体的な時期は明らかになっていません。地理的な位置から、瀬戸内海に面した臨海性と、広大な平野を見渡せる内陸性の両方の性格を持つと考えられています。吉備の中山は、後世の備前国と備中国の境界にあたり、本古墳はまさにその境界線上にあることも特筆すべき点です。周辺では、矢藤治山古墳や尾上車山古墳（国の史跡）といった初期から前期の古墳も確認されており、中山茶臼山古墳が吉備地方における古墳文化の中心的存在であったことがわかります。

被葬者と歴史的背景

中山茶臼山古墳の被葬者は明らかではありませんが、宮内庁の治定の通り、大吉備津彦命の墓であるとされています。『古事記』や『日本書紀』には、大吉備津彦命が吉備国を平定した記述がありますが、墓に関する記述はありません。1874年に本古墳がその墓に治定されて以来、現在までその扱いは続いています。

吉備の中山山麓には、大吉備津彦命を祭神とする吉備津神社（備中国一宮）と吉備津彦神社（備前国一宮）があります。特に吉備津神社は国史にも記されており、社伝によると大吉備津彦命は吉備の中山麓に茅葺宮を建て、281歳で亡くなり山頂に葬られたと伝えられています。これらの神社の存在は、中山茶臼山古墳が吉備地方における大吉備津彦命信仰と深く関わっていることを示唆しています。

遺跡の発掘調査

明治7年（1874年）に大吉備津彦命の墓に治定された後、昭和55年（1980年）には鳥居改築工事に伴う立会調査が行われ、弥生土器などが出土しました。2008年度には、宮内庁書陵部による墳丘測量調査が実施され、墳丘の規模に関する新たな知見が得られました。これらの調査は、中山茶臼山古墳の解明に大きく貢献しています。しかし、まだ多くの謎が残されており、今後の調査によって、より詳細な情報が明らかになることが期待されています。

中山茶臼山古墳は、その規模、形状、歴史的背景から、吉備地方の歴史を理解する上で極めて重要な遺跡です。今後の研究により、さらに多くのことが明らかになる可能性を秘めています。

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