中島英樹

中島英樹（なかじまひでき）

中島英樹は、1961年 8月30日に埼玉県久喜市に生を受けた、日本を代表するアートディレクター、グラフィックデザイナーです。その活動は多岐にわたり、日本のデザインシーンに革新をもたらしました。国際グラフィック連盟や東京ADCの会員としてもその影響力を示しました。

略歴

中島氏はデザインに関する専門的な教育は受けていませんでしたが、複数のデザイン事務所で経験を積みました。特に、清水正己デザイン事務所では、カルチャー雑誌として知られる『Cut』のチーフデザイナーとして活躍し、その独特の世界観を形成する上で重要な役割を果たしました。ロッキング・オンでの経験を経て、1995年には自身のデザイン事務所である有限会社中島デザインを設立、独立したデザイナーとしてのキャリアを本格的にスタートさせました。

精力的に創作活動を続ける中、2022年 2月3日、動脈硬化による脳梗塞のため、惜しまれつつも60歳でこの世を去りました。短い生涯ではありましたが、その残した功績は計り知れません。

主な仕事と作品

中島氏の仕事は、単なるデザインの枠を超え、視覚表現の新たな可能性を追求するものでした。その作品は、書籍、雑誌、CDジャケット、ロゴデザイン、アートディレクションなど、非常に幅広い分野に及びます。

特に有名な作品としては、

ブックデザイン・エディトリアルデザイン: 講談社現代新書のシリーズデザインをはじめ、荒木経惟氏、森山大道氏、上田義彦氏といった著名な写真家の写真集デザインを手がけました。雑誌『Cut』や『DUNE』での斬新な誌面デザインも高く評価されています。
ジャケットデザイン: 音楽家・坂本龍一氏のCDジャケットデザインは、その実験的なアプローチで注目を集めました。
ロゴデザイン: 日本酒ブランド『IWA』やNHK Eテレの番組『ETV特集』のロゴなど、記憶に残るロゴデザインを生み出しました。
アートディレクション: シュウウエムラ、ヨウジヤマモト、ISSEI MIYAKEといった国内外のファッション・コスメブランドのアートディレクションも手がけ、それぞれのブランドイメージを刷新しました。

これらの仕事を通じて、彼は常に既存のデザイン概念に挑戦し、素材、タイポグラフィ、レイアウトの常識を打ち破る表現を追求しました。

受賞歴と国際的な評価

中島氏のデザインは、国内外で高く評価され、数多くの賞を受賞しています。

国内の主な受賞:

東京ADC賞（1999年）
東京ADC原弘賞（2007年）
東京TDCグランプリ（2006年）
講談社出版文化賞ブックデザイン賞（2003年）
造本装幀コンクールにおける東京都知事賞や日本書籍出版協会理事長賞

海外の主な受賞:

ニューヨークADCでは金賞を複数回（1996年、1998年、2000年、2001年）受賞
ニューヨークTDC審査員賞（2006年）
ブルノビエンナーレベスト・デザイン賞（2000年）
シカゴアテナイオングッドデザイン賞（2001年）、イオン賞（2009年）

これらの受賞歴は、彼のデザインが単に日本のデザイン界で評価されるだけでなく、国際的な基準で見ても非常に高いレベルにあったことを証明しています。

個展と作品所蔵

中島氏は国内外で精力的に個展を開催しました。2000年の「RAW LIFE+SAMPLED LIFE展」を皮切りに、東京、京都での展示に加え、中国（広州、深圳、杭州、上海）、マカオ、イギリス、ドイツなど、世界各地でその作品を発表しました。これらの個展は、彼のデザインに対するアプローチや思想を深く理解する機会となりました。

彼の作品は、その芸術的な価値を認められ、世界中の著名な美術館や機関に所蔵されています。

ニューヨーク近代美術館（アメリカ）
ボストン大学（アメリカ）
チューリッヒ美術館（スイス）
フランス国立図書館（フランス）
The OCT Art & Design Gallery（中国）
* 現代グラフィックアートセンター CCGA（福島）

これらの所蔵は、中島氏のデザインが現代美術・デザイン史において重要な位置を占めることを示しています。

著書とデザイン界への貢献

中島氏は自身の作品集やデザインに関する書籍も多数発表しました。『REVIVAL』、『S/N』、『CLEAR in the FOG』など、彼のデザイン哲学や制作プロセスを知ることができる貴重な資料となっています。また、東京ADCや東京TDCの理事、ニューヨークADCやTDC、香港デザイナーズアソシエイションアワードなどの審査員も務め、後進の育成やデザインの普及、質の向上にも大きく貢献しました。

まとめ

中島英樹氏は、正規のデザイン教育を受けずに独自のキャリアを切り開き、グラフィックデザインの可能性を広げた革新者です。短い生涯の中で、雑誌、書籍、広告、ファッションなど多岐にわたる分野で記憶に残る作品を生み出し、国内外で高い評価と影響力を持つに至りました。彼の残した作品と功績は、今後も日本の、そして世界のデザインシーンに影響を与え続けるでしょう。

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