中川末吉

中川末吉は、1874年（明治7年）に滋賀県で生まれました。幼少期は地元の小学校を卒業後、村役場で働いていましたが、足尾銅山の関係者である中川武三の養子となり、その縁から銅山での仕事に従事するようになりました。

その後、古河財閥の創業者である古河市兵衛に見出され、彼の店で働くことになります。中川は向学心にあふれており、働きながら商工中学校や早稲田専門学校に通いました。さらに、海外留学への強い憧れを持ち、1903年にアメリカに渡り、ペンシルベニア大学やエール大学で6年間学びました。

帰国後は、古河財閥の中核企業である古河電気工業に入社し、海外での販売開拓にも尽力しました。その後、1914年には横浜電線の常務に就任、1917年には古河銀行の専務取締役、1921年には古河電気工業の専務（後に社長）と、要職を歴任しました。また、横浜護謨製造（現在の横浜ゴム）や富士電機の社長も務め、1940年には日本軽金属の社長に就任するなど、数々の企業の経営を担いました。さらに、横浜商工会議所の会頭としても活躍しました。

戦後は公職追放を受けましたが、解除後は古河系企業の相談役としてその経験と知識を活かしました。中川末吉は、その卓越した経営手腕と国際的な視野で、日本の産業界の発展に大きく貢献しました。

中川の家族構成にも触れておきます。実父は農業と酒造業を営む赤塚又左衛門で、中川には六男三女の兄弟がいました。妻の富は、足尾銅山の幹部であった木村長兵衛の娘で、後に古河市兵衛の養女となりました。妻の兄は旭電化工業の社長を務めた鈴木市之助、弟は吉村万治郎です。また、長女のすみは子爵板倉勝弼の子である中川勝富と結婚しました。

中川末吉は、激動の時代を生き抜き、日本の産業界に多大な功績を残した人物として、その名は後世に語り継がれています。

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