板倉勝弼

板倉勝弼：備中松山藩最後の藩主の生涯

板倉勝弼は、備中松山藩（後に高梁藩と改称）の第8代にして最後の藩主です。幼少期は僧侶を志していたと伝えられていますが、運命の歯車は戊辰戦争によって大きく動き出します。

父である板倉勝喬の四男として生まれた勝弼は、当初は静かな道を歩む予定でした。しかし、先代藩主である勝静が旧幕府軍に与し箱館まで転戦したため、松山藩は新政府軍の厳しい追討を受けることになります。この危機的状況の中、藩の重臣山田方谷は、勝静の嫡男である勝全ではなく、勝弼を新たな藩主として擁立するという決断を下します。

当時、松山藩は朝敵の汚名を着せられており、藩関係者に対する新政府の監視は厳しく、勝弼を藩主に迎える計画は極めて危険を伴うものでした。使者として派遣された川田剛は、勝弼を丁稚姿に扮装させ、横浜から備中玉島行きの船に乗船させようとしますが、途中で新政府軍の兵士に発見されます。窮地に陥った川田は機転をきかせ、勝弼を殴り飛ばすという大胆な行動に出ます。この奇策により、兵士たちは驚き通行を許し、勝弼は無事備中松山へとたどり着くことができました。

明治2年（1869年）、新政府から所領を5万石から2万石に減らされるという厳しい条件付きではありましたが、勝弼の家督相続は認められました。同年10月には藩庁所在地の松山が「高梁」と改称され、11月には勝弼は知藩事となります。しかし、明治4年（1871年）2月、政府の命令で東京へ赴任し、同年7月の廃藩置県により免官となります。

勝弼の藩主就任には、後日のお家騒動を防ぐため、重臣たちから「勝静の嫡男である勝全が帰還した際には、必ず家督を譲る」という起請文を書かされるというエピソードが残っています。後に赦免された勝静は、この起請文を聞きつけると、「勝全は朝廷から咎めを受けた身であるため、家督を継がせることはできない」と断言し、勝弼から起請文を取り上げ、自らそれを破り捨てた上で、勝弼への忠誠を改めて誓わせたと言われています。この逸話は、勝静の勝弼への揺るぎない信頼を示すものとして、歴史に刻まれています。

明治17年（1884年）7月8日、勝弼は子爵に叙爵されます。そして、明治29年（1896年）9月には上野東照宮の社司に就任しますが、同年10月21日、51歳の若さでこの世を去ります。

勝弼の生涯は、激動の時代に翻弄されながらも、持ち前の機転と周囲の信頼によって、藩主としての役割を果たし、華麗な一族を築き上げた物語です。彼の生き様は、現代においても多くの示唆を与えてくれるでしょう。

系譜とその後

勝弼には、複数の側室との間に多くの子供たちがいました。その中には、政治家として活躍した勝忠や、様々な分野で才能を発揮した子供たちが含まれています。また、勝弼の血筋は、子孫である板倉重徳へと受け継がれ、現在にまで至っています。彼の後継者たちは、それぞれの人生を歩み、板倉家の歴史を彩っていきました。 勝弼の没後も、板倉家の人々はそれぞれの道を歩み、日本の近代化に貢献していくことになります。 その系譜は、複雑で興味深いものとなっています。

この記述は、入手可能な情報に基づいて作成されていますが、更なる調査により、新たな事実が明らかになる可能性があります。

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