中川泉三

中川 泉三（なかがわ せんぞう）

中川泉三は、1869年5月25日に近江国坂田郡大野木村（現在の滋賀県米原市大野木）で生まれた日本の歴史家です。彼は地歴研究に関する独自の学びを重ねていき、特に滋賀県内の各郡の志を編纂することでその業績を残しました。

生い立ちと教育

泉三は、父である宮川藩士中川洸平次を12歳の時に失い、母親の育てによって成長しました。母からは「友に劣るな、寡婦の子とそしりを受けるな」との教えを受け、強い意志を持って学業に励みました。小学高等科を卒業後は、農業に従事しながら独学で学問を深め、最終的には母校の代用教員にまで成長しました。

特に漢詩文に興味を持っていた彼は、小野湖山や土屋鳳州らから指導を受けたことで、高い文筆力をつけていきました。1889年には漢詩集『賤ヶ岳懐古集』を世に送り出し、若い時期から一流の文筆家との交流を持つようになります。

歴史家としての活動

1905年に「柏原村誌」の編纂依頼を受け、これを完成させたことで、泉三は本格的に歴史研究の道へと進むことになります。1907年には「近江坂田郡志」の編纂事業に取り組み、1913年にはその完成を見ました。これにより、彼の学問的な功績が広く評価されるようになり、以後は滋賀県内の数多くの地方史の編纂に関わることになります。

彼が手掛けた主な郡志には、「近江蒲生郡志」、「近江栗太郡志」、「愛知郡志」、「近江日野町志」などがあり、これらの編纂活動を通じて地域の歴史を明らかにしました。また、「近江の聖蹟」や「曽我氏家記」、「石之長者木内石亭全集」といった著作も発表し、学問の進展に寄与します。

泉三は執筆活動だけでなく、歴史研究の面でも多くの講演会を通じて学びを広め、地域の人々への教育にも力を注ぎました。彼の晩年は「章斉」と号し、徳富蘇峰らとも親交を持ちながら詩や歌に親しみました。

最後の時期と影響

1939年12月27日、泉三は彦根市史の編纂を行っている最中に病に倒れ、惜しまれつつこの世を去ります。彼が編纂した郡志は、地域の神社や寺院の由緒を明らかにし、歴史の中に埋もれた人々の再評価を促進しました。また、大化の改新による条里制の研究も進められ、学術界で高い評価を受けました。

著作と関連事項

中川泉三の代表的な著作には、

• - 『元弘忠臣北畠具行卿の事蹟』（1912年）
• - 『近江坂田郡志 上巻・中巻・下巻』（1913年）
• - 『伊吹山名勝記』（1913年）
• - 『近江日野町志 巻上・巻中・巻下』（1930年）
• - 『近江蒲生郡志』（1922年）

などがあります。

また、彼の業績は2020年に出版された書籍『史学は死学にあらず』でも称賛されています。中川泉三の研究と著作は、地域史を深く理解するための重要な資料として今なお活用されています。

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